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震災の記憶を繋ぐ「みちのくの仏像」たちが集結

震災の記憶を繋ぐ「みちのくの仏像」たちが集結

 

 東日本大震災から4年。被災地に思いをはせる人も多いこの時期、東北地方の仏像を一堂に集めた展覧会が東京・上野の東京国立博物館で開催されている。特別展「みちのくの仏像」だ。

⇒【写真】ほかの仏像…勝常寺薬師如来坐像、双林寺薬師如来坐像、天台寺聖観音菩薩像

 この展覧会には、黒石寺(岩手県)・勝常寺(福島県)・双林寺(宮城県)の薬師如来坐像が集結。この3体が揃うのは初めてのこと。

 威厳溢れる表情と体形の黒石寺薬師如来坐像は「千年に一度」と言われる規模の巨大地震を二度経験した。貞観11年(869年)の貞観地震と、2011年の東北地方太平洋沖地震だ。2011年の地震では、台座からあと少しで落ちそうな状態になったという。

 肉感的で堂々とした体に、衣紋に特徴のある勝常寺の薬師如来坐像は、今回唯一の国宝仏。彫刻分野では東北初の国宝でもある。“都ぶり”な表現も見られることから、仏師が都から来て作ったという説もある東北古仏の代表的存在だ。

 狭い額や二重の皺など、「天台薬師」の特徴を持った双林寺の薬師如来坐像。東北地方太平洋沖地震の最大余震(4月7日)で、持国天が薬師如来の左腕に倒れかかって両像とも破損。2年に及ぶ修復期間が終わり、今回の展示となった。持国天を支えた薬師如来の左手に思わず見入ってしまう。会場には震災後の状況を写した写真が飾られ、当時の様子がうかがえる。

 これら3体の薬師如来坐像には、巨木を使用した「一木造(いちぼくづくり)」の技法が用いられている。

 会場入口に佇むのは、天台寺(岩手県)の聖観音菩薩立像。一木造の技法に加え、像の表面にノミ目を残す鉈彫(なたぼり)が用いられている。ノミ目からは、仏を刻む音を感じることができる。みちのくの人の木に対する信仰から、木にこもった神様や土地の神様が仏と共に二重に表されているのではと思えてくる。会場に立つと、木々に囲まれているような気さえする。

 これら完成度の高い像に混じって、愛らしい像がある。小沼神社(秋田県)の聖観音菩薩立像だ。すらりと細身の体に尖らせたような唇、耳を覆う髪の表現。頭上の化仏がおかっぱ頭の雪ん子のよう。この独特な仏像は都から手本が伝わる過程で違ったものとなり、土地で信じられてきた神と合わさって作られたのかもしれない。

 ほかにも円空仏や本山慈恩寺(山形県)の十二神将立像など多様な仏像が一堂に会し、みちのくの仏像の魅力を存分に味わえる。この日を待ちわびた仏像ファンも多いという。音声ガイドナレーターは女優の薬師丸ひろ子さん。静かに包み込むような声で、みちのくの仏像の世界に浸ることができる。

 みちのくの仏像をいくつも巡るには、移動距離がどうしても大きくなってしまう。東北地方は広く、岩手県だけでも1万5278.89平方キロメートル。これは埼玉・千葉・東京・神奈川を合わせた面積(1万3559平方キロメートル)より広いのだ。そんなみちのくの仏像たちがこれだけの規模で集結している。この機会を逃す手はない。

 また、同展が行われている東京国立博物館・本館では、被災文化財再生への取り組みを紹介した「3.11大津波と文化財の再生」も開催中(本館特別2室・特別4室にて。こちらは3月15日まで!)。

 震災の記憶を繋ぎ、東北の魅力を再確認できるこの展覧会、ぜひ今の時期に行ってみてはいかがだろうか。 <取材・文・撮影/山内千代>

●特別展「みちのくの仏像」http://michinoku2015.jp/

【会場】東京国立博物館 本館特別5室で2015年4月5日(日)まで

【開館時間】9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで、金曜日は20:00まで。4月4・5日は18:00まで開館)

【休館日】月曜日[3月23日(月)・30日(月)は9:30~17:00まで特別開館]

【観覧料金】一般1000円・大学生700円・高校生400円・中学生以下無料

※「みちのくの仏像」展では、3月14日・15日に行われる「上野発!!東北応援キャンペーン」でPRブースを出展。数多の災害を乗り越えてきたみちのくの仏像たちをはじめ、東北の歴史・文化の魅力を伝える。グッズも購入可能。

【上野発!!東北応援キャンペーン】

日時:2015年3月14日(土)・15日(日)/11:00~16:00 会場:JR御徒町駅南口駅前広場(おかちまちパンダ広場)

※「東北応援キャンペーン」の詳細は、コミュニティサイト「上野が、すき。」 (http://digest.beach.jp/ueno-matsuzakaya/)へ

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