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東京発祥の麦で造る「金子ゴールデンビール」には100年の歴史が詰まっていた
即日完売のビール、その理由は?
東京23区で特に農地が多い区、それが練馬区である。住宅と農地が混じり合い、まだら模様を生み出している。その練馬区にて5月9日に「金子ゴールデンビール」(580円・330ml)が発売され、2,000本が即日完売した。筆者は翌日買いに行ったら全く在庫がなく、問い合わせると「今回仕込み分は完売」だと言う。一体どのようなビールなのだろうか。
「金子ゴールデンビール」
金子ゴールデンとは、1900年に金子丑五郎氏が現在の練馬区にあたる地域で育成した麦のことである。この麦は酒造用に栽培されていたそうだ。昭和40年代までこの麦を栽培していたという練馬の農家・渡戸章さんによると、「出来のよい1~4等がビールに、余った5等はウイスキー用に使われていた」そうだ。
当時は多くの農家がこの麦を栽培していたそうだが、採算面からすれば率先して栽培される農作物ではなかったようだ。「丈夫な殻と穂が畑の風よけになり重宝した」そうだが、ビニールハウスが普及し、その必要もなくなったという。
金子ゴールデンの栽培を再開した渡戸章さん
誰もが「金子ゴールデン」という麦を忘れ去ってしまった時代が続く。だが、ふとしたきっかけでこの麦が農業生物資源研究所にて保存されていることが判明した。「地元の練馬でこの麦を復活させて、ビールが飲めたら」という夢のような話が持ち上がり、平成15年、同研究所から3g(約70粒)を分けてもらい、渡戸さんが栽培をスタートさせた。
「経験がある者にとってこの麦の栽培は難しくない」らしく、それから順調に収穫量を増やし、昨年は2.3tに達した。現在、練馬の6軒の農家が栽培している。
現在では練馬区内で6軒の農家が「金子ゴールデン」を栽培している
ビール醸造は福生の酒造が担当ビールの醸造は、福生の石川酒造が行っている。1998年から地ビール生産を行っている同社だが、金子ゴールデンでの仕込みは初挑戦だった。この麦は殻が固いのが特徴で、それ故にデンプンの糖化が思うように進まず、苦労したそうだ。また、タンパク質が多いため液が濁る傾向があったのだが、この点は温度管理によって酵素の働きを強め、クリアできたそうだ。
実際に1本試飲させていただいた。香りはメロン、口に含むと爽やかさとほろ苦さが加わり、マスカット果汁のような涼味が感じられる。瓶詰めしたてのものは極微発泡である。瓶内発酵するように造られているので、冷暗所で寝かせれば味わいが深まり、発泡も強まるだろう。「3~5年後には香味のピークを迎え、熟した果実の様な味わいが楽しめます」という説明があった。
1回目の販売は終了したが、5月末に2回目の仕込みが始まっている。7月頃には瓶詰めされ、改めて販売される予定だ。詳細はJA東京あおば地域振興部まで。