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国産受注ソファ、ヒット作を生み出す工房に潜入!一生使える本当によいソファって? (1) MD、デザイナー、メーカーというトライアングル
新社会人、はたまた新大学生など、新生活が始まった人も多いかと思う。一人暮らしを始めるにあたって自分なりにこだわりを持ちたい……そんな中でも念願のソファを手に入れたい! そんな野望を持っている方もいるだろう。しかし同じ2人がけソファとはいえ、ネット検索すると5,000円という激安のものから、イタリア直輸入350万円!という超高額なものまで、その差は果てしなく大きい。
せっかく買うのだから、リラックスできることは大前提として、長持ちして、安心して使えるソファを選びたい……。そんな風に考える人が増えているのか、最近「国産」「日本製」のソファへの関心が高まっているようだ。
というわけで、前回のこの記事でもおなじみ、“イデーの中の人”である家具開発担当の三嘴(みつはし)隆造さんと、今回はイデーのソファ作りに携わること20年、西清木工所取締役の西山文重さんのもとを訪れ、ソファの「違い」を生み出す商品開発の舞台裏についてを聞いてみた。
いかにも下町といった風情の工場。職人たちが東京発のモノづくりを支えている。
さて。まずはここでイデーのおさらい。イデーは、1982年に国内で木製椅子の製作からスタートした東京の家具ブランドで、ソファをはじめ、主力の定番家具・照明はすべてオリジナル。ユニークなデザインと作りの良さはもちろん、丁寧なアフターフォローでも知られている。2009年からは、合理的な生産方法で手ごろな価格を実現した「e by IDEE(イー バイ イデー)」シリーズが加わり、幅広い年齢層から支持を広げているが、核となる商品は受注生産ベースの国産家具である。皆さんも一度は目にしたことがあるのでは?
MD、デザイナー、メーカーというトライアングルの重要性
今年創業50年を迎える西清木工所とイデーの協力関係は1990年にさかのぼるという。三嘴さんが実際に西清木工所を訪れたのは2005年。その背景にはイデー社内の開発プロセス改革があったと三嘴さんは語る。
イデーのソファづくりを20年以上支えてきた西清木工所の西山取締役
まず、家具開発に登場する役者を整理しよう。三嘴さんは家具開発担当=「マーチャンダイザー」(MD)という存在。本来ならば、良い家具作りのためには「デザイナー」「メーカー」そして「MD」という3者のトライアングルがしっかりと成り立っている状態がベストという。
「これは弊社の現社長(良品計画グループの代表をつとめる金井政明氏。『無印良品』ブランドの商品開発分野のキーパーソンとしても知られる)の言葉なのですが、デザイナーが、デザインと生活を繋ぐのが仕事であるならば、マーチャンダイザーはビジネスとデザインを繋げるのが仕事。…ですが私がイデーに入社した頃(2000年頃)は、MDという職務は存在しませんでした。
当時はソファ作りはデザイナーとメーカーがダイレクトに行い、品揃えに関しては当時の経営トップが直接把握するというやり方で、まさに創業オーナーの強烈な企画力とカリスマ性で「イデー」というブランドを成立させていたと思います。その後2005年あたりから、社内的に“品揃え”の見直しがあり、「商品部」が新設され、商品部がデザイナーとコラボレーションをしながら作り手である工場と話をするという図式に変わっていったんです」
一台一台のソファのデザインを突き詰めていくデザイナーと、それに技術で答えるメーカー。さまざまな試行錯誤のドラマがあり、芸術性の高いソファを生み出したに違いない。一方、それを何台、誰のために、どんな意図で作るのか? 企業としてそれを司るのがMDである。当時のデザイナーとメーカーとの蜜月……そこにMDという存在は、やっかいな存在ではなかったのだろうか?「MDの三嘴さんが来られても、その横にはデザイナーがいて、そのトライアングルで“製品を作る”という作業自体は変わらない」という西山さんに同意して三嘴さんは言う。
「MDが入ることによって全体像を理解してモノ作りをできるようになった」(三嘴さん)
「デザイナーはあくまでもモノ作りの視点から話します。当時は作り手サイドから見れば、なぜそのタイミングでこの商品を作るのかという開発意図が分からないこともあったと思う。例えばこういう形状で作りたいとデザイナーが言えばそれは分かる。けど、このソファはそもそも誰のために作るのか? MDが入ることによって全体像や目的をより明確に共有してモノ作りをできるようになったというのが、大きく変わった点の1つだと思います」
何よりも細かなこだわりを持つイデーのソファ
西清木工所では、イデーのソファ作りのほか、張替、設計事務所からの案件など、その業務は多岐にわたる。そんな中でもイデーソファの特徴のひとつとして「表に見える見えないに関わらず、細かいところまでこだわりを持っている」と西山さんはいう。
「西清木工所が小売向けとして受注しているのはイデーだけなんです。設計事務所などからの張替え依頼は基本的にいちど納品したら終わり。そのときに必要なのはどちらかというと瞬発力。でもイデーの場合は何十年という単位で、継続してエンドユーザーに商品を販売していかなくてはいけない。そういう意味でクオリティひとつの細かい部分に口を出す、そういうスタンスでお仕事させていただいています」
イデーでは、販売時、顧客に将来の生地の張替えを積極的に薦めている。実際、10~15年前のソファの張替えを、という依頼は、相当な割合にのぼるという。購入時とまったく同じ生地で新品状態に戻すというより、むしろトレンドの違いも加味して、新たな印象の違う生地を施し、ビフォーアフターを楽しみたいというファンが多い。そんなリクエストに答えてくれるのもイデーソファの魅力と言えるだろう。
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