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【小さな山旅】田舎道ウォーキング…吾国山(1)
今回は前々回の難台山登山で登頂を諦めた吾国山へのリベンジ登山を決行した。それは、関東にも雪が積もった一月某日の翌々日であった。 どうせ登るならば違うルートがいいと思い、茨城県笠間市にあるJR福原駅から歩くことにした。駅の駐車場(有料)に車を停めると、駅員さんが「吾国山に登るんかい? そしたら、ここを曲がって、あそこを曲がって……」と親切丁寧に道を教えてくれた。駅員さんのプライスレスな対応は、駐車料金210円を惜しくないと感じさせた。 プライスレスな駅員さんがいる福原駅から吾国山へと続く道は、登山道でも遊歩道でもなければ、散策路でもない。いたって普通の田舎町を通る田舎道である。普段は車でびゅんと通り過ぎてしまうような、何の変哲もない道だ。 駅前にはささやかなお店が建ち並び、小さな踏切の先には一軒家が建ち並ぶ。それらの間を道が通る。その地域に生きる人々の生活を肌で感じながら、アスファルトで舗装された道を歩いていく。すると、間もなく田畑が広がる道に出る。田畑は先日に積もった雪でうっすらと表面を覆われていた。 茨城県の県央地域に住む筆者にとって、雪は一年に一度積もるかどうかの珍しい存在だ。こうして休日に雪を見ながら歩くと、とても優雅な気分に浸ることができる。少々はしゃいで、そこらの積もった雪から雪玉をこさえて、道路に投げつけて遊びながら歩いていると、とある民家の前でひとりの男性が立っているのに気付く。 「こんにちは~♪」とハイカーズ・スマイルで挨拶する。普段は地元の町を歩いていても、ろくに挨拶もしない筆者であるが、山登りに来た際は笑顔で挨拶できてしまうから不思議である。 「吾国山に登るのけ?」 男性がしゃべりかけてくれる。挨拶だけで終わらないのが、なんとなくうれしい。 「そうなんです。今からいってきます」 自然に出てくる笑顔と、ちょっと都会人っぽい丁寧な言葉使い。その時、筆者は都会から来た旅人の気分になっていた。そこから車で20分の場所に住んでいるくせに。 「だったら、その道を右に曲がるといいよ」 男性が教えてくれた道は、予定していたルートとは別の道であった。地元民ならではの情報を、偶然収拾することができた。ますます旅らしくなってきた。 「吾国山はどの山ですか?」 引き続き、都会人風ハイカーズ・スマイルで質問をする。あくまで旅人の装いは崩さない。その理由は、筆者自身にもわからない。…