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10年前に一度白紙化、京葉線の複々線化急浮上
千葉県は新年度、JR京葉線の複々線化に向け、事業費算定や採算の分析などの調査を行う方針を固めた。
新年度中にまとまる政府の交通政策審議会の答申で、優先的に整備する路線に位置付けられることを目指す。約10年前に白紙化された構想だが、東京臨海高速鉄道りんかい線との相互乗り入れ・直通運転が現実味を増す中、急浮上してきた。
京葉線は1960~70年代に県企業庁が埋め立てた土地を利用し、当初は貨物線として計画された。県交通計画課によると、当時、旅客線と貨物線を並行させる構想があり、線路4本分の用地が確保された。88年には新木場―蘇我間が旅客線として開業し、残る2本分の約13ヘクタールは企業庁が保有を続けた。だが、県は2006年に「JR側に複々線化の計画がない」と判断し、処分を進める方針を決定。その後、約3ヘクタールが売却された。
転機は、今年1月に行われた森田知事とJR東日本の冨田哲郎社長との会談だ。関係者によると、席上、JR側はりんかい線との直通運転実現の課題として、京葉線の輸送力の限界を指摘。新木場以西が東京方面と大崎方面に分かれることに伴い、行き先によって本数が二分される問題の解決策として、複々線化が話題になったという。
京葉線は朝のラッシュ時を中心に過密状態にあり、増便の余地はほとんどないとされる。沿線住民からは直通運転への期待が高まる一方、「東京方面への本数が減らされると困る」との声も上がっていた。
こうした経緯から知事は2月23日、県議会で複々線化について「(過密ダイヤ)緩和のためには有力手段で、関係者で検討の際は協力していきたい」と答弁。JR東の石川明彦千葉支社長も同27日の記者会見で「非常に大きな設備投資を伴う」と指摘しつつ、「会社全体で検討される課題」と述べるなど環境づくりは進みつつある。
新年度には交通政策審議会が15年ぶりの答申をまとめ、16年以降の首都圏の鉄道整備の優先度などを示す。答申で優先度が高く位置付けられると、整備促進が進むのがこれまでの通例だ。
県は外部に委託して調査を行うことにし、特にダイヤの過密度が高い武蔵野線との合流点(市川市高谷)と新木場の間を重点区間と設定。〈1〉概算事業費の算定〈2〉採算性分析〈3〉効果や実現に向けた課題整理――などをテーマに8月上旬頃、中間とりまとめを行う方針だ。調査では、りんかい線がJRの「羽田空港アクセス新線」と結ばれる可能性を踏まえ、羽田空港などと県内の各都市、観光地がつながる効果も検討する。
事業化の最大の課題は事業費で、県交通計画課は「JRが負担するのが原則」とのスタンスだ。一部の用地買い戻しも必要となり、実現の場合でも開通は2020年の東京五輪後になるとみられている。(田島大志)
◆複々線化=上下線を2組の計4本の線路で運行できるようにすること。2本の複線運行に比べ、輸送力が倍増するほか、快速や特急の待ち合わせ時間が解消されスピードアップにつながる。JR総武線では錦糸町―千葉間で複々線化され、快速と各駅停車の上下線が並行して走っている。