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硝煙と呪術が織りなす問答無用のオカルト激ヤバ抗争! でも青春小説
原題はApocalypse Now Now。フランシス・コッポラ監督の映画『地獄の黙示録』(Apocalypse Now)を意識しているのは明らかで、邦題もその意を汲んでいるのだろうが、内容に合わせるとしたらちょっとカタい。Now Nowは南アフリカ(作者の出身地)の方言で「近い将来」をさす。これは不良少年の物語だし恋愛要素もけっこうあるので、いっそ『世紀末が来るぜ!』と意訳すればよかったのに。主人公のバクスターは16歳(シックスティーン)。そこが危NAI。……昭和なネタですみません。
バクスターはケープタウンの高校生にして、学内で組織的にポルノDVDを売りさばいているグループ〈スパイダー〉の中核メンバー。他人をチェスの駒くらいに考え、「この世は醜くて残酷で血も涙もない。それを出しぬくには、もっと醜くて残酷で血も涙もない人間になるしかない」とうそぶくメチャ悪ガキだ。そのカレにしてこのカノジョあり。ガールフレンドのエズメはひどい盗癖の持ち主で、罪悪感のかけらもなく何でも掠めとってくる。
そのエズメが何者かに攫われてしまい、バクスターは必死になって手がかりを追いはじめる。極悪カップルでも愛情はホンモノってあたりが泣かせるね(ヤンキー漫画かよ!)。
まず目星をつけたのはポルノ絡みの誘拐だ。バクスターは〈スパイダー〉の仲間の協力を得て、クリーチャー・ポルノ(異形のモンスターが登場するAV)の制作者ユーリを拉致し、拷問にかけてエズメの居場所を吐かせようとする。このユーリはロシアマフィアの幹部との噂もある。そんな男に酷いことをして大丈夫か? あとでマフィアに捉まって大西洋に沈められたりしないか?
そうとうムチャをするバクスターだが頭の回転はむしろ良いほうで、それが斜に構えたものの見方やジョークまじりの皮肉な口ぶりに表れている。この独特な饒舌も本書の楽しさのひとつだが、これもある種のヤンキー漫画を思わせる。いや、ここは格調高くホールデン・コールフィールドの直系と言ったほうがいいか。本書解説の橋本輝幸さんの言葉を借りれば「内面に秘める弱さ」「痛々しくこじらせた思春期」だ。
さて、『ライ麦畑でつかまえて』の原型となった短篇は”I’m Crazy”(1945)と題されていたが、『鋼鉄の黙示録』のバクスターも頻繁に自分は狂っていると口にする。はじめのうちは露悪的にオレはイカれていると放言していたのだが、やがて身のまわりに超自然的な出来事が頻発するので、自分が正気を失ったのかと心底不安になってしまう。…