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菌に敏感になりすぎるから病気になる! 消毒・除菌・殺菌に潜む落とし穴
すり傷や切り傷ができたら、消毒薬を塗り、絆創膏やガーゼで覆うことが常識だった。消毒薬が傷口にしみても、泡が立つ様子を見て「効いている」と安心していた人もいるだろう。しかし最近、消毒薬の傷口への使用が身体の免疫力を弱めることが明らかになり、従来の認識が覆されようとしている。
血液中の白血球は、免疫機能の中心的存在である。何らかの理由で傷ができると外部から体内にばい菌などが侵入しようとするが、傷から血が流れるのは白血球がそれを防ごうとするからだ。また、血中の血小板は出血を止める役割を果たす。このように、消毒薬がなくても、すでに身体には傷を治すメカニズムが整っているのだ。
なかには「消毒薬を塗れば、さらに傷の治癒を早めてくれるのでは?」と思う人もいるだろう。しかし、消毒薬は人工的に合成された化学物質のため、悪い菌だけでなく身体を守る良い菌も一緒に殺し、さらには白血球までも壊してしまう。また、乾燥した場所では白血球の働きが妨げられるため、ガーゼや絆創膏の使用も避けたほうがよい。
現在、主流になりつつあるのは、これまでの消毒・乾燥処置とはまったく異なる「湿潤療法」だ。傷口を流水で洗い、ワセリンを塗った後にラップをし、乾燥させないようにする方法で、処置の目的は傷を治すことではなく、白血球の持つ傷を治す力を引き出すことにある。「傷を治すのは薬ではなく自分の身体だ」という真理に沿った方法なのだ。
菌に敏感すぎると免疫力が低下する
最近のO-157やノロウイルスによる感染症の流行のせいか、むやみに除菌や殺菌を行う人が増えている。スーパーの棚に並ぶ除菌・殺菌グッズの種類の多さは、「日本人のきれい好きは度を超えている」と思ってしまうほどだ。
こうした感染症が話題になると、不思議なことに皮膚科の患者が急増するという。なぜ内科ではなく皮膚科なのか? まず、感染症が流行すると、店やオフィスビルの入口に手の除菌・殺菌用ジェルが置かれるようになる。たいていの人はそれを見ると「使わないといけない」という気持ちになり、使用回数が増え、結局は手が荒れてしまう。そして手荒れの原因が除菌ジェルと結びつかず、心配になって皮膚科に行くことになるのだ。
過度な除菌・殺菌剤の使用は、ばい菌から身体を守る皮膚表面の皮脂膜を破壊する。またそれだけでなく、皮脂膜と同様外敵から身体を守ってくれる、人体に生息するビフィズス菌や大腸菌などの常在菌を殺すことにもなりかねない。…