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<イラン>「全部本物です」…ニセのアップルストア大繁盛
◇制裁措置 アップル社製スマホ、周辺国から密輸入
【テヘラン田中龍士】イランの核開発に対する制裁措置で欧米企業の事業が制限されている同国で、米国のアップル社製スマートフォンを扱うニセのアップルストアが急増している。製品は周辺国から密輸入した本物だ。イラン政府が制裁解除を目指してスイスで核協議を続ける中、国内では制裁を逆手に取ったビジネスが広がっている。
「全部本物ですよ」。テヘラン市内のニセ店舗に入ると、店員から声をかけられた。カメラやパソコンなどを扱う電気店がひしめくこの商業ビルには、本物そっくりのアップルのロゴを店頭に掲げたニセアップルストアが22軒ある。約3年前から増え始めたといい、最新機種「iPhone(アイフォーン)6」も並んでいた。
アイフォーン6(容量16ギガバイト)は、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの正規店より約1%高い約8万6500円。平均月収4万円以下のイランでは庶民には手が届かないが、富裕層のステータスシンボルとなっており、毎月130万円を売り上げるという。
商品の入手ルートについて、別地区の店員が「多くは密輸品。テヘランには約15のブローカーがあり、大量に仕入れるため手数料は安く、販売価格を抑えられる」と声を潜めて説明してくれた。仕入れ業者らの証言を総合すると、UAE、イラク、トルコなど周辺国でスマホを買い付ける。ある業者の男性は「ボートで密輸したり、旅客機の乗客に手伝ってもらったりする場合もある。税関をうまくすり抜ける業者も存在する」と話した。
貿易会社のパルビズ・シャパール社長は「密輸は外貨が国外に流出し、国内経済に損失だ。核協議で合意し、市場が開放されれば外貨流出に歯止めがかかり、雇用創出などの効果もある」と指摘する。一方、ニセ店舗の店長は「制裁は、我々に好都合。国内で権力を持ち、制裁から富を得ている者たちは合意に反対しており、核協議はうまくいかないと思う」と語った。