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<新作映画評「セッション」>師弟の音楽対決でみせたJ・K・シモンズ「狂気」の演技と、弱冠28歳のチャゼル監督による驚愕の演出
鬼気迫る、とはこのことだろう。映画評に限らず、文章を書くうえで紋切り型表現は避けよ、というのは常識だが、この場面を表すのに、この言葉以外には見当たらない。それほど、この映画のラストシーンの迫力は凄まじい。
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文字通り血みどろになりながら、スティックでドラムをたたく主人公。そして、憎しみからなのか、弟子を育てようという愛情からなのか、悪鬼のごとき形相で指揮する元教師。まさに師弟の愛憎が絡み合ったセッション。この場面は、一瞬たりとも目を離すことができない。
主人公のニーマンは名門音楽大学に入って、ジャズドラマーとしての修行に励む。そして、伝説の名教師、フレッチャー率いるバンドの一員に選ばれ、徹底的にしごかれる。2人のライバルとの闘いにも勝って、主奏者に選ばれる。だが、自らのミスもあり、晴れの舞台で失態を演じ、退学を余儀なくされる。
アルバイトをしながら、ドラマーをあきらめきれないニーマン。教師を辞め、プロの指揮者として演奏活動をするフレッチャーと偶然、再開し、ドラマーとして誘われる。そして、迎えた本番。そこが2人の「セッション」だ。
ニーマン役のマイルズ・テラーの演技は申し分ない。そして、フレッチャー役のJ・K・シモンズはもはや、演技という領域を超えている。「天才」を育成したいというフレッチャーは、本人が一種の天才であり、そして「天才と狂気は紙一重」という格言を体現している人物だ。シモンズは、その「狂気」を十二分に表現した。アカデミー賞とゴールデングローブ賞ドラマ部門の2大映画賞で助演男優賞を獲得したのは当然だ。
そして、驚嘆すべきは、監督・脚本のデイミアン・チャゼルの才能である。初の長編映画で、撮影時は弱冠28歳ながら、華麗なテクニックを駆使して、スリリングでサスペンスフルなドラマを作った。
ワンショット内の映像が重視される現代において、敢えて俳優の表情や楽器のアップなどショット同士の衝突、ショットの積み重ねによるモンタージュ手法を重用し、映画的興奮を高める。そのキレの良さには、既に熟練の味わいがある。そして、モンタージュだけではなく、やや長めのワンショット内のカメラワークも見事だ。その緩急の組み合わせは、心地よいリズムと、時にはもどかしささえ感じさせるサスペンスも生み出す。大げさなアクションや、CGによる特殊撮影があるわけではない。オーソドックスな技術だけで、これだけ迫力ある映像をつくり出したのだ。…