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<漆掻き道具>継承に光 青森の職人に弟子

 <漆掻き道具>継承に光 青森の職人に弟子

 漆の木から樹液を採るための漆掻(か)き道具が作れる全国で唯一の鍛冶職人、中畑文利さん(72)=青森県田子町=の後継者を募集していた同町が1日、富山市出身の清水翔平さん(23)を非常勤特別職として採用。国の「地域おこし協力隊員」の辞令を交付した。技術存続の危機は、ひとまず脱した。
 
  金沢大大学院1年目でコンピューターの分野を学んでいた清水さん。「携わる人が少なく、こつこつと物作りを続け技術の習得が実感できる」職を探していたところ、インターネットで後継者募集を知り「これしかない」と飛びついた。大学院は中退。職人の道を選んだ。山本晴美町長から辞令を渡され「世界中に情報発信したい。町に骨を埋める覚悟で参りました」とあいさつ。山本町長は「しっかり伝承してほしい」と励ました。
 
  数種類ある漆掻き道具は形が複雑で、樹液を集める「掻き手」と呼ばれる職人のくせや要望に応じ刃幅や曲がりを整える。中畑さんは中学卒業後、父の長次郎さん(故人)の下で修業を始め、1995年に国の選定保存技術保持者に選ばれた。
 
  農水省の統計では、国内の漆消費量のうち、国産は2.6%(2013年)と衰退。それでも田子町と隣接する岩手県二戸市浄法寺町が6割以上を占め、この地域の掻き手約20人全員が中畑さんの道具を使う。
 
  だが、中畑さんの下で6年間修業していた男性が昨年、町を去り、中畑さん自身も抗がん剤治療中。町が「町の宝である中畑さんの技術を残したい」と、都市住民の地方への定着を促す「地域おこし協力隊」制度を利用して後継者を募集。9人が応募し、面接などの結果、熱意を買われ清水さんが選ばれた。
 
  辞令を受けたその足で中畑さんの工房を訪れた清水さん。「着任」を報告し「技術の伝承・保存に努めていきたい。今からうずうずしています」と抱負を語った。中畑さんは「体の続く限り教えていく」と喜んでいた。【塚本弘毅】

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