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北京独特の下町路地の風情を活写=写真展「胡同の四季」が開催中―『老北京の胡同・開発と喪失、ささやかな抵抗の記録』刊行を記念
「北京胡同の四季」と題した写真展が4月17日(金)まで東京・神田神保町で開催されている。『老北京の胡同(フートン)―開発と喪失、ささやかな抵抗の記録』(写真・張全、文・多田麻美)の刊行を記念したもので、モノクローム写真の数々が人々の暮らしと風情豊かな街の雰囲気を伝えている。
【その他の写真】
北京独特の下町路地である胡同(フートン)。灰色のレンガの壁が延々と続き、その裏側に、大小様々な中庭型住宅が並んでいる。この狭く雑多だがホッとする空間だ。住民の間で家族的な近所づきあいの習慣が残り、老若男女が元気に暮らしている。
明代、清代と王朝が代わる中でも、生き残ってきた胡同だが、北京五輪に伴う再開発や大型ビルの建設で多くが取り壊された。かつて大きなものだけでも4000あったとされるが、現在は500以下に減ってしまった。
この迷宮ともいえるに胡同に10年以上住み、地元の人たちと交流してきたフリージャーナリストの多田麻美さんがカメラマンの夫、張全さんが撮影した多くの写真とともに、『老北京の胡同(フートン)開発と喪失、ささやかな抵抗の記録』(晶文社刊)を刊行。エピソード満載の作品に仕立て上げた。
周囲の住民が既に立ち退き、建物が壊される中で静かに抵抗する人。立ち退きを最後まで拒否する「釘子戸(クギ世帯)」の実態も明かされる。利潤追求のために住民を追い立てる開発業者や見て見ぬふりをする行政。切なさや諦観も伝わってくるが、人々はしたたかだ。
北京の胡同を取りまく様々な人間関係、生活、文化、政治、開発、環境保護について、生き生きと描写され、消えつつある胡同に対する著者の愛情と危機感が伝わってくる。銭湯に地元の人たちと入って心を通じ合うさまもほほえましい。
私が30年前に初めて北京に行った際、随一の繁華街・王府井の周辺には多くの胡同があったが、今はそのほとんどが高層ビル街に変貌した。その後も、残された胡同を訪れるたびに著者と同じ思いを抱く。日本でも、高度成長時代に消失した伝統的な住空間が多かった。バブル時代には「地上げ屋」が跋扈(ばっこ)していた…。読み終えて様々な思いが脳裏をよぎった。(八牧浩行)
<「北京胡同の四季」写真展、17(金)まで開催中。会場=「ブックカフェ二十世紀」(東京都千代田区神田神保町2-5-4開拓社ビル2階)>