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<チュニジア>悲しみと怒り 国旗掲げ「反テロ」叫ぶデモ
【チュニス秋山信一】血だまりに一輪の花がささげられた。心の傷をそっと癒やすように。ある人は鎮魂のろうそくに灯をともし、ある人は「反テロ」を声高に叫ぶ。静と動のコントラストが、チュニジアの動揺を物語っていた。
【鎮魂のキャンドル、「反テロ」デモ】チュニスの様子を写真特集で
日本人3人を含む23人が犠牲になった国立バルドー博物館襲撃事件から一夜明けた19日、閉鎖されていた博物館の敷地の一部が開放され、数百人のデモ隊が入り口の前まで行進した。「血塗られたチュニジアに自由を、テロリズムを追い出せ」。赤を基調とした国旗を掲げ、国歌を歌うデモ隊の姿は、テロに屈しない市民の意思を体現していた。
イスラム過激派に警察官の夫を殺害されたジュディ・アメンさん(49)は約120キロ離れた中部スースから駆けつけた。「夫のことを思い出し、昨夜は眠れなかった」。反テロのシュプレヒコールを勇ましく叫ぶが、心境を問うと「とても悲しい」と答えが返ってきた。
近くに住む中学1年生のワディ・サルミさん(12)は、博物館裏手にある商店で母親と買い物をしていた時に事件に遭遇した。連続する銃撃音の大きさに「(2011年の)革命の時に聞いた祝砲とは違うとすぐに分かった」。逃げ惑う観光客の姿が脳裏に焼き付き、「チュニジアのために行動したい」と母親に訴えて、デモに参加した。
警察官が厳重に警備する入館口前の路上には、10カ所以上に血だまりが残り、ガラスの破片が散らばっていた。血だまりの近くには、ピンクのバラや大小のろうそくが供えられていた。
博物館から離れると、チュニス市内は平穏な空気が漂う。19日夕、約4キロ東の目抜き通りでは、春の陽気に誘われて、路上ライブや屋外カフェがにぎわっていた。
だが表層には出ない緊張感もある。「なぜ日本人と一緒にいるんだ」。記者がチュニジア人通訳(20)と歩いていると、私服警官が声をかけてきた。通訳が持っていた身分証が期限切れだと指摘し、発行元の会社に身元確認の電話を入れる念の入れようだった。
チュニジアは国民の約2割が観光関連の仕事に就く「観光立国」だ。外国人観光客が多数巻き込まれた事件に衝撃を受け、治安当局は「第二のバルドー」を厳重に警戒する。「バルドー博物館の警備要員として新たに警察官400人が採用されることになりました」。19日にラジオから聞こえてきたニュースは、過剰とも思える政府の反応を伝えた。
「この先、どうなるのか心配です」。中心街のホテルに勤めるソニアさん(40)はため息をついた。客商売に笑顔は欠かせない。ソニアさんは事件後も明るく振る舞うが、接客が途絶えると表情が曇る。「こういう痛み、あなたに分かるかしら」。両拳を心臓の前に合わせ、ソニアさんはギュッと目をつぶった。
チュニジアは20日、独立記念日を迎え、中心街にはチュニジア国旗が並ぶなど高揚感が漂っている。直前の襲撃事件を受けて、国民の連帯を表す大規模な集会も予定されている。