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ちょっとシュールに「猫街鉄道放浪記」 (45) 夜行列車放浪記(1)「北斗星」
思い立ったら「北斗星」……だが、切符はとれるのか
突然、北国に旅立ちたくなった。ゴールデンウイークの真っ最中の5月2日のことである。こういう時は夜行列車である。鞄ひとつで放浪記だ。しかし、すでに日本の夜行列車は壊滅的である。セレブ向けの「カシオペア」は別格として、多くの寝台、夜行が発車していた東京・上野両駅を見てみると、東京駅からは電車寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」と臨時快速「ムーンライトながら」、上野駅からは札幌行きの寝台特急「北斗星」、羽越、奥羽本線経由青森行きの寝台特急「あけぼの」、485系に替わり臨時急行になった金沢行きの「能登」だけがわずかに残っているという状況である。おまけに、新宿駅から発車する臨時の「ムーンライト信州」「ムーンライト越後」も含めムーンライトは全席指定、臨時急行「能登」も3月19日から自由席がなくなって、思い立って乗るというわけにいかなくなった。
そこで、せっかくならば「北斗星」に乗ってみようと思い、JR「みどりの窓口」へ行ってみた。新幹線が新青森まで年末にのびるが、そうなると廃止になるかもという噂があるからだ。
さて、14時頃にA駅の「みどりの窓口」で聞いてみると、5月4日B寝台(開放)上段が1席、5月5日のB寝台ソロが空いているという。ところが優柔不断な私は決められない。食堂車の予約はもう締め切ったということだったからだ。パブタイムがあるそうだが、食事がとれるのかが、担当した窓口の人はわからないという。
悩みながら、別の用事があって電車に乗り、他の駅へ。「みどりの窓口」に置かれた時刻表を見ると、バータイムでも食事は頼めそうだということがわかった。そこで切符をとろうと聞いてみたところ、「5月4日のB寝台はもうない」とのこと。「他にないですか」と粘ると、B寝台の二人用個室デュエットがあるという。でも、1人でデュエットしても、ちょっと困る。カラオケでエアチークダンスを踊るようなもんだ。それに6,000円以上高くなるのも困りもの。
丁重にお断りして、家に帰ってふて寝しようとも思ったが、渋谷に用事を思い出した。渋谷駅で降り、またしつこく「みどりの窓口」に行く。16時過ぎ。すると、5月4日も5日もB寝台は空いているとのこと。そこで、色気を出して「3日はある? ないよね……」と聞いてみたところ、B寝台があるとのこと。おまけに下段だ。「人生は諦めてはいけない。粘り勝ちだよ、人生は」といって切符を手にしたのだった。B寝台開放だけどね。
夜行は上野駅から
「北斗星」が推進運転ではいってくる。携帯のカメラのシャッター音がひびきわたっていた
「北斗星」を牽引するのはEF81-80
「やっぱり夜行は上野駅からだぜ」と思う。あの寂しい上野駅の地下ホームがいっそう旅愁をかきたてる。でも、上野発の寝台特急に乗るのは、1997年春「はくつる」以来。この時は、青森県野辺地駅で下車し、南部縦貫鉄道のレールバスに乗りに行ったんだっけ。ちなみに、最初に乗った寝台列車は、上野発盛岡行き寝台急行「北星」で、3段の寝台だった。
いつもB寝台でごめんなさい。B寝台ソロにするには、早めの予約が必要
さて、5月3日18時20分上野駅に着く。まずは腹ごしらえ。北斗星が発車する13番線横の「らーめん粋家」でいちばん安いラーメンを頼む。そういえば、2年前能登に乗った時もこの「らーめん粋家」で「ネギらーめん」を食べた。が、今回は不景気でもあり普通の「ラーメン」に格下げ。ちなみに屋号の「粋家」は「スイカ」と呼ぶ。Suicaももちろん使えるが、現金払い。放浪には小銭が似合っているということで、小銭主義なのである。
北斗星の入線は18時50分。発車前のわずか13分前、写真を撮る老若男女を横目に1号車に入る。B寝台開放は、ヨーロッパの列車のように閉め切ってはないものの、4人1コンパートメントと考えるといいだろう。私が乗ったコンパートメントは、上野駅からが私を含め2人、大宮駅からが1人、そして福島駅から一人であった。ゴールデンウイークということもあって寝台は満員だった。
食堂車は40分待ち
食堂車に入れず、ロビーカーで待機することに
21時15分を過ぎてパブタイム。食堂車が開放される。私は21時35分頃食堂車に行ったのだが、満員ということで、隣のロビーカーで待たされる。ロビーカー内では、シャワー室があくのを待っている夫婦、お葬式に向かっている年老いた人々の会話が耳に入ってくる。22時を過ぎても食堂車からは声がかからない。ラストオーダーは22時30分のため、だんだん焦ってきた。
22時15分をまわって私の名前が呼ばれ、食堂車に入る。メニューを見て1,600円のビーフシチューと1,800円のワインを頼む。ビーフシチューは懐かしい味である。ラベルに北斗星が書かれているワインボトルを傾け、手酌でグラスにワインを注ぐ。ちょっと遅い夕食である。あれ、さっきラーメン食べたよな。もとい、ちょっと早い夜食であった。
今日のディナー、ビーフシチューとワイン
食堂車に入れてよかった、よかった
食堂車から1号車に戻り、下段のベッドに横たわり、睡眠をとる。翌朝、津軽半島蟹田付近で、夜行急行「はまなす」とすれ違う。5時15分。放送によると、昨夜仙台付近で人身事故のために26分遅れているとのこと。青函トンネルを抜けて函館に近づくと、列車はさらに遅れていた。近郊列車との間隔調整のためである。7時6分、定刻を30分以上遅れてようやく函館駅に到着。ここで電気機関車を切り離し、反対側にディーゼル機関車に付け替える。北斗星は定刻を32分遅れた7時14分、進行方向を代えて札幌方面に向け出発した。
「はまなす」とすれ違う
さよならEF81