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鉄道トリビア (53) 旅客列車を1本も掲載しない時刻表が市販されている
時刻表といえば、一般には駅の掲示や書店で販売されている列車時刻表を指す。最近は携帯電話でも閲覧できる。乗客が移動する際に使用するためのもので、当然ながら掲載される列車は旅客列車ばかり。ところが、旅客列車がまったく掲載されていない時刻表が市販されており、鉄道ファンに大人気という。一体どんな時刻表だろうか。
「旅客列車が掲載されていない時刻表」とは、社団法人鉄道貨物協会が発行する「JR貨物時刻表」だ。鉄道のお客は人間だけではない。全国の荷主から預かった貨物も大切なお客。貨物を運ぶ列車もダイヤに則って走っており、ちゃんと時刻表があるというわけだ。
「JR貨物時刻表」(2,400円)。下に敷いた紙は付録のダイヤグラム
貨物列車時刻表はお楽しみ要素がいっぱい
「JR貨物時刻表」は毎年1回、ダイヤ改正時に発売される。価格は2,400円で、主な利用者はもちろん運送業者や荷主だ。ところが、鉄道ファン、特に機関車のファンから「撮影の参考に購入したい」という声が多くなってきたため、鉄道専門書を扱う書店でも取り扱いを始めた。また、鉄道貨物協会のWebサイトからも通信販売で購入できる。
巻頭カラー地図は、貨物列車が走る路線しか描かれていない日本地図。本文の時刻表も貨物列車のみ。秩父鉄道など私鉄の貨物列車や、貨物専用の臨港鉄道の時刻も掲載されている。ユニークなところでは「オフレールステーション」といって、貨物駅と周辺地域を結ぶトラック便の発着時刻も掲載されている。これは旅客用時刻表にあるバスの欄のような存在だろうか。利用できるコンテナの紹介や寸法図面などもあり、いかにも貨物列車の利用者向け、といったところ。
巻頭地図は貨物列車運行路線のみ
本文は私鉄や臨港鉄道も表示
しかし、創刊30周年記念号となる2010年版は貨物列車ファン向けの内容が盛りだくさんだ。図面入りの貨車紹介ページ、機関車の1日の行動を示す「運用表」、機関区の所属機関車一覧、貨物駅の線路配置図などを収録。これらは「荷物が無事に定時に届けばいい」という荷主さんにとっては知らなくてもよさそうな内容。鉄道ファン向けに情報を公開してくれているというわけだ。極めつけは巻末のグラビアページ。ここはフォトギャラリーとして、全国の貨物列車ファンが投稿した写真で埋め尽くされている。貨物輸送と鉄道の頼もしさが伝わってくる力作だ。
貨車を紹介するページ
駅構内の線路配置図もある
貨物時刻表に掲載された列車はどれも乗れない。しかし、撮り鉄、貨物列車ファン、線路ファンには人気の1冊だ。発売から3カ月、すでに各地の取扱書店で売り切れも出ているという。