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追悼・坂東三津五郎さん 盟友・中村勘三郎に誓った“男の約束”〈dot.〉

 2月21日、膵臓がんのために59歳の若さで亡くなった坂東三津五郎(本名・守田寿=もりた・ひさし)さんの葬儀・告別式が25日、東京都港区の青山葬儀所で営まれた。
 
  歌舞伎俳優・尾上菊五郎、市川海老蔵やSMAPの木村拓哉ら著名人のほか一般のファンを含めた5000人が参列して、三津五郎さんの死を悼んだ。
 
  2013年9月に膵臓がんの摘出手術を受けたが、昨年4月に復帰。闘病を経て歌舞伎座の舞台に復帰した会見では、「皆さんが待っていてくださって、私の生きる場所はここ(舞台)だと思いました」と力強く語った。
 
  だが、9月には12月に控えていた主演舞台の降板を発表。復帰を目指していたが、再び舞台に立つことはかなわなかった。
 
  6歳のときに坂東八十助を襲名、先代の父・三津五郎が亡くなった2年後の01年(当時45歳)に、10代目・三津五郎を襲名した。日本舞踊・坂東流の家元でもあり、歌舞伎界きっての踊りの名手としても知られた。
 
  そんな三津五郎さんと盟友だったのが、2012年に57歳の若さで亡くなった中村勘三郎さんだった。同い年だった2人は幼いころから共に芸を切磋琢磨して、私生活でもふたりで旅行をするほどだった。
 
  勘三郎さんの葬儀で三津五郎さんは「君のまねはできないし、やり方は違うかもしれないけれど、雅行君(勘九郎の本名)、隆行君(七之助の本名)、七緒八君(勘九郎の長男)と一緒にこれからの歌舞伎を守り、戦い続けることを誓います」と述べたが、その言葉通り最後まで舞台で戦い続け、歌舞伎座の屋台骨を支えてきた。
 
  三津五郎さんは1月末にインフルエンザに感染、肺炎を併発していたため、都内の病院に緊急入院した。それでも、2月7、8日には一時外出の許可をもらい、都内で行われた「日本舞踊 坂東流」の名取試験には家元として立ち会い、8日の試験前には、NHK・BSプレミアム「美の壺」(27日放送)の収録を自宅で行ったという。
 
  弔辞で菊五郎は「君は趣味も多く、お城好きで自分の番組まで持っていたようで。『姫路城が好きだ』『彦根城が好きだ』と言っていたけど、ホステス嬢もキャバクラ嬢も好きでした。向こうの世界のネオン街でもいい店を探しておいてください。私が行ったらいい店を紹介してください。ありがとう」と三津五郎さんに語りかけた。
 
  かつて三津五郎さんも、盟友に「僕がそちらに行ったら、また、一緒に踊ってください。そのときのために、また、稽古しておきます」と語っていた。
 
  「美の壺」では、印伝(鹿の革を加工した工芸品)の魅力について「男にとってはたまんない」と笑顔でインタビューに答えていたという。
 
  盟友との踊りと酒…三津五郎さんの「たまんないね」という声が聞こえてきそうだ。
 
 (ライター・戸崎圭子)五輪でのメダル獲得に向けた「ターゲット競技」の選定で、文科省は、女子フィギュアスケートを「A」から「C」に格下げした。いま、なぜ――。
 
  四大陸選手権は、世界のトップグループへの「登竜門」といわれる大会だ。今年は2月12〜15日に韓国・ソウルで行われた。日本は女子で、宮原知子(さとこ)(16)が銀、本郷理華(18)が銅と二つのメダルを獲得。2018年平昌(ピョンチャン)五輪への期待が高まった。
 
  しかし、まさに大会期間中の2月13日、文部科学省が下したある「判断」に、フィギュア界が揺れた。五輪でのメダル獲得に向けた「マルチサポート事業」のターゲット競技で、女子フィギュアを最高のAランクから格下げしたのだ。
 
  羽生結弦(ゆづる)が現役を続行している男子は「金メダルを含む複数のメダル獲得が期待される」Aランクのままなのに、女子は「メダルの期待される」Bランクどころか、かろうじて「メダルの可能性がある」Cランク。浅田真央の休養が続くなか、“現役女子にはもう期待しない”とも取れる決定だった。
 
  マルチサポート事業は、トレーニングや栄養面、心理的・医学的ケアから情報戦略まであらゆる面で、選手に対する「専門的かつ高度な支援を戦略的・包括的に実施する事業」だ。しかし、Cランクの競技の場合、選手への個別支援はなし。五輪期間中に一部のサポートを受けられるのみになってしまう。
 
  フィギュア関係者が描く、平昌五輪での日本女子のメダルへの展望は、マルチサポート事業の選定を行ったスポーツ研究者らのそれに比べると明るい。
 
  現在の全日本女王・宮原は、四大陸でもショート首位、総合2位という堂々たる成績を残し、こう自信を見せる。
 
 「完璧にやれば優勝できたと思うので悔しい。ジャンプの質は一年一年良くなってきている」
 
  銅メダルを獲得した本郷も、ジャンプ力に定評があるだけでなく、日本女子では珍しく長身で演技が映える。16歳の永井優香も、四大陸では出場選手中最年少で6位。
 
 「ジャンプの種類はシニアの選手でもほぼ同じだった。質はもっと高めたい」と言ってのけ、伸びしろを感じさせた。実際、世界の女子のトップグループの武器は、永井も跳べる「3回転+3回転」の連続ジャンプ。3年後のメダルの可能性は誰にでもある。
 
  平昌五輪開催時には出場可能年齢に達している小中学生にも、きら星のごとく有望選手が控えていて、Aランクの男子と状況は何も変わらないのだ。
 
 ※AERA 2015年3月2日号より抜粋

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