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“安倍無双”でも無風で終わらぬ自民総裁選
上向く景気を背景に安倍晋三内閣は高い支持率を維持し、今年9月に予定される自民党総裁選は“無風”の様相を呈している。谷垣禎一幹事長ら党三役は「安倍続投」を明言し、有力候補と目される石破茂地方創生担当相らも意欲を語ることはない。だが、この表の平穏さとは裏腹に、水面下では「ポスト安倍」をめぐる動きが活発化しはじめている。
「総裁選に出てはいかがですか」
2月中旬、都内の飲食店で鳩山邦夫元総務相と向き合った古賀誠元自民党幹事長は酒を酌み交わしながら、おもむろに切り出した。鳩山氏は「私は安倍政権を支えつづける」と取り合わなかったが、宏池会(岸田派)名誉会長として政界に影響力を保ち続ける古賀氏の一言は、不気味な余韻を残した。
鳩山氏が主宰する派閥横断型の政策グループ「きさらぎ会」のメンバーは118人に上り、党内最大派閥の細田派(清和政策研究会=95人)を超える。古賀氏はその数に目を付けたとみられるが、きさらぎ会は派閥掛け持ちのメンバーが大半で、鳩山氏への忠誠心が強いとは決していえない。
それでも古賀氏が鳩山氏を口説こうとしたのは、自身が影響力を行使できる政権を樹立するためだろう。本来なら派閥会長の岸田文雄外相を立てるべきだが、閣僚という立場上、出馬は難しい。古賀氏は、自身が後見役を以って任じる野田聖子前総務会長に「いつでも総裁選に出られるように準備しておけ」と命じてもいる。
前回の総裁選を安倍首相と争った石破氏も、公の席では「全力で首相を支える」と語るが、周辺は石破氏がかつて所属していた額賀派(平成研究会)との関係修復に乗り出している。「閣僚でも大義名分があれば、出馬できないわけではない」(周辺)と、準備だけは着々と進めているのだ。
何より安倍首相自身、周囲に「総裁選がないと思ってはだめだよ」と選挙戦を望むような発言をしている。「戦って信任を得たという形をつくったほうが、政権の追い風になる」(周辺)と、周囲は脅威にならない中堅議員を擁立する動きも見せている。
その思いは様々。総裁選は決して「凪」では終わりそうにない。