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「豊作貧乏」宅配業者の悩み 通販ビジネス拡大、取り扱い個数は増えたけれど…
1970年代に登場した宅配便。近年はネット通販の普及で急成長し、もはや現代日本に欠かせない社会インフラだ。一方で、料金の適正化や物流コストの削減など課題は多い。現状と将来はどうなるのか。トラックターミナルをネットワークで結び、30キロ以下の小型貨物を1個単位で配達する宅配便は、1976年1月に大和運輸(現在はヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸)が「宅急便」を開始したのが始まりで、来年には40年目を迎える。
1980年代には大手運送会社の新規参入が相次ぎ、クロネコ、ペリカン、カンガルーなど各社のシンボルマークになぞらえた“動物戦争”と呼ばれる競争が激化した。その後、98年に佐川急便(現・SGホールディングス傘下)が参入し、07年には郵便事業(2012年から民営化されて日本郵便、JP)の「ゆうパック」も参加。14年3月末時点の国内宅配便事業者は21社だが、ヤマト(46・3%)、佐川(33・9%)、JP(11・9%)の3社で9割以上の市場占有率(シェア)を占める寡占状態になっている。
宅配便の取り扱い個数は2013年度で約36億3700万個。このままのペースが続けばあと2~3年中に40億個を突破する見込みだ。リーマン・ショック後の世界同時不況で2008年と09年に2年連続で前年割れしたほかは一貫して右肩上がりの成長を続けている。
成長の背景には貨物の小口化・多頻度化がある。個人の荷物に加え、パソコンなど工業製品の小型化で企業から請け負う小型貨物が急増した。必要なときにこまめに発注して在庫保管コストを減らす「ジャスト・イン・タイム方式」の普及で配送回数も増えた。
宅配業者による需要開拓も見逃せない。スキーやゴルフ場、空港への荷物直送サービスは目的地まで身軽に動けるとユーザーに歓迎され、商品の代金と引き替えに荷物を渡す「代引き」は代金回収に苦慮する通販業者に喜ばれた。冷蔵(0~5度)、冷凍(マイナス18度)など温度管理を徹底したクール宅配便は、中元・歳暮など生鮮食料品の贈答や産地直送便の急増につながった。配達時間を指定する期日・時間帯配送はいまやあたりまえになっている。
経済産業省の調査によれば、いわゆるネット通販市場は2013年度で前年比17・4%増の11兆2000億円にまで膨らんだが、ユーザーがネット購入した商品を全国津々浦々に届けてくれる宅配便がなければ、通販ビジネスも成り立たないだろう。
取り扱い総個数は順調に伸びて行ったが、宅配各社には共通の悩みがあった。1個あたり単価の低迷だ。宅配便は個人ユーザーに対しては定額料金だが、大量の貨物を扱う企業相手では料金は荷主との交渉になる。競争激化のなかで取引量を増やしたい宅配業者は「他社はいくらで? それならうちはこれだけ下げます」と料金の値引き合戦を展開。ネット通販など大荷主が求める当日配達地域の拡大や送料無料化などに対応するうち、扱い高は増えているのに実入りが少ない「豊作貧乏」に突入していった。
佐川急便は2010年3月期の11億2495万個から13年月期には13億5650万個と取り扱い個数を増やしたが、1個あたりの単価は同483円から同460円に低下。ヤマト運輸の単価も過去10年連続で低下し続け、14年3月期は前年より17円低い574円と過去最低水準に落ちた。
扱う荷物が増えればそれに応じた人手やコストが要るのに、収益が伴わなければ十分に手をかけられない。仕事が雑になり、サービスの質も低下しかねない。佐川は13年に、ヤマトも14年に法人向け運賃の適正化交渉、つまり値上げへと舵を切った。業界でのプレイヤーが減るなかで、荷主に対する両社の発言力は以前より増していた。
その結果、佐川の14年3月期の扱い個数は12億1878万個と前年より約1割減ったものの、単価は逆に486円と好転。ヤマトの単価も15年3月期は第1・四半期が587円、第2・四半期が592円、第3・四半期が598円と徐々に改善し、収益は上向いている。だが、宅配便業者が抱えている課題はそれだけではない。