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支援延長でも払拭できない ギリシャ3月危機の可能性
債務問題に苦しむギリシャのチプラス政権にとって、最初の関門は、2月末に現行の支援プログラムが期限を迎えることだった。
2月20日、ユーロ圏財務相会合は、ギリシャ政府からの支援延長要請に応じ、最大4カ月間延長することで合意。その条件だった、構造改革案のリストについても、期限に1日遅れの24日にギリシャ政府から提出された。マーケットもこれを好感し、1月末のチプラス政権発足以来10%を超えていたギリシャ10年債の利回りは、24日に8%台に大幅低下した。株価(アテネ総合指数)も年初来の高値となった。
だが、これは危機の先送りにすぎない。期限は延長されたが、実際に金融支援が実行されるためには、4月末までに詳細な改革案を提出しなければならない上、ギリシャ政府は議会で改革に関連する法案を可決する必要がある。だが、「反緊縮財政」を掲げて総選挙で勝利したチプラス政権が、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)のいわゆるトロイカを納得させられるものを出すとは考えにくい。他方、ドイツとIMFを中心に、トロイカ側もギリシャに対して妥協する可能性はほとんどない。
実際、今回のギリシャの改革案リストに対して、IMFのラガルド専務理事は、「多くの点において、改革を実行する明確な確証に欠ける」と冷ややかだ。
他方、ギリシャの政局も不安定だ。「反緊縮財政」で成立した連立政権にとって、改革案には温度差があり、空中分解する可能性が高く、法案可決も容易ではない。
難関は3月の資金調達
最大の問題は、「ギリシャの財政資金が3月中にも底を突く可能性がある」(田中理・第一生命経済研究所主席エコノミスト)ことにある。支援プログラムの4カ月間の延長が決まったが、融資実行は年央にずれ込む可能性が高い。
今年1月の税収は、34.9億ユーロと、計画に対して10億ユーロ以上も少ない。その多くは政権交代による税制変更の可能性を見越した“滞納”という見方もあるが、欧州景気も悪化している中、税収を計画通りに確保できるかどうかは不透明だ。
ギリシャ政府は、政府短期証券の発行増額で当面の財政資金を確保することを検討しているが、それには支援提供国やECBから発行上限の引き上げが認められなければならない。間接的な財政ファイナンスに相当する恐れがあるとし、ECBは難色を示すだろう。
しかも、主要な引き受け手と考えられるギリシャ国内の銀行はチプラス政権発足以来、預金流出が相次いでおり、引き受けるだけの余力がない。
チプラス政権は国内的には反緊縮策への意思を見せながら、トロイカには支援獲得のために妥協せざるを得ない。ギリシャの綱渡りは続く。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)