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武田薬品の不適切広告問題 京大調査も真相解明ならず

 武田薬品の不適切広告問題 京大調査も真相解明ならず

 謎は謎のままだ。国内製薬最大手である武田薬品工業の高血圧症薬「ブロプレス」に関する臨床試験「CASE‐J」をめぐる不正疑惑について、研究に関わった京都大学は2月27日、「大学に問題はなかった」とする調査報告書を公表した。

  武田の調査委員会から遅れること約半年、ようやく報告に至った京大も、試験結果が不適切なかたちで宣伝広告に使われた問題の真相を解明しなかった。

  巨大な高血圧症薬市場でブロプレスは国内だけで年1000億円規模を稼いできた。CASE‐Jはこの薬の効果を他社品と比較するもので、2001~05年に実施し、患者約4700人が参加した。

  その試験結果は武田にとって期待外れだったろう。二つの薬の効き目に差は出なかったのだ。

  ところが、武田が作った宣伝用パンフレットで紹介された試験データは、08年に医学誌で発表された論文のグラフと異なり、ブロプレスの優位性を印象付けるものになっていた。

グラフのずれは謎のまま

  広告に載ったグラフには問題点が二つある。脳卒中などの発生率を比べるグラフが、ブロプレスに有利になる方向に“ずれ”ている点と、論文では削除されたデータが残っている点だ。

  京大の調査委はグラフにずれがあると認定したが、「京大側は作成に関与していない」と判断。ただ「注意して確認し、今回の事態を防ぐことが望まれた」として、研究者2人を口頭で厳重注意した。

  京大の依頼でデータを検証した専門家は「武田が作為的にグラフを作成し、誇大広告を行った疑いを否定できない」との見解を寄せた。調査委に武田は「担当者の記憶があいまいで理由の特定ができない」と回答している。

  京大は不適切なグラフが広告に使われたことを「京大の研究者は気付いていなかった」と言うが、論文発表後に発行された医療雑誌「日本臨牀」にも不適切なグラフは掲載されている。執筆者の京大教授は「自らが日本臨牀に送付したグラフとは異なっている」と調査委に釈明したが、日本臨牀社は「執筆者から提供されたデータを使っている」と本誌の取材に対して説明。ここでも矛盾が生じている。

  武田はCASE‐J関連で計37億5000万円を寄付し、うち約28億円を京大が受け取った。実質的なスポンサーだった武田からの資金や労務の提供によって、研究の公正性が損なわれる利益相反の点で京大は「今日の基準では、利益相反の懸念を第三者から表明されかねない事態」としながらも、「当時は問題とされるべき状況ではなかった」と強調した。

  不適切な広告で不利益を被るのは患者である。武田、京大共に身内に甘い調査で幕引きを図ろうとするならば、信頼回復は遠のくばかりだ。

 (週刊ダイヤモンド編集部 大矢博之)

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