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センサこそが半導体企業の成長を下支えする基盤となる
STMicroelectronics,Executive Vice President,Analog・MEMS・Sensor GroupのGeneral ManagerであるBenedetto Vigna氏
STMicroelectronicsは6月17日、都内で会見を開き、Executive Vice President,Analog・MEMS・Sensor GroupのGeneral ManagerであるBenedetto Vigna氏が同社のMEMS/センサビジネスについて説明を行った。
同社がMEMSビジネスに本格参入したのが2005年と比較的近年だが、その後の8年間で売上高は10億ドルを超すまでに急成長している。その中心が、ファウンドリビジネス、コンシューマ機器向け加速度センサ/ジャイロセンサであり、そうした製品のカスタマが多い日本地域について同氏は、「将来のロードマップを定義するうえで重要な地域」と説明する。
STのMEMSビジネスの売り上げ推移。Wiiのコントローラにセンサが採用された2006年から一気にファウンドリ(HPのプリンタヘッド)以外のビジネスが拡大しているのが分かる
STのMEMS生産工場の概要。現在、日産500万個超び生産能力を保有している
また、「(加速度や角速度などの)モーションMEMSは日本市場のカスタマとの取引もあって堅調に成長してきたが、STとしてはその次につながる製品開発を強力に推進している」とのことで、2012年には写真撮影時の手振れ防止用デュアルコア・ジャイロセンサが日本のカメラ企業に採用されたほか、MEMSマイクロフォン、車載用エアバッグ向け加速度センサ(2013年後半には実際に搭載した車両が市場投入されるという)などを提供開始したとする。また、2013年は、「タッチスクリーン向けやモーションMEMSの小型化した製品の投入を加速する」とし、タッチセンシングが大きく進化していくことを強調した。
さらに今後は、人間の感覚・動作に限りなく近い情報を検知・出力する「Humanizing技術」の開発を進めて行くことで、現実と仮想化された情報の融合が進むとしたほか、インターネットとの接続によるIoT(Internet of Things)とMEMSの融合が進み、「これまでインターネット内で完結していた各種のデータが、現実の世界につながった形のアプリケーションとして活用することが可能になる」とした。
こうした技術の実現のために同社では、「モーションMEMSのさらなる技術開発のほか、圧力や温度センサなど、すでに実用化しているものに加えて、2014年には化学物質センサの投入を計画している環境MEMS、マイクロフォンやスピーカなどのアコースティックMEMSやピコプロジェクタなどに向けたマイクロアクチュエータの高性能化といった各MEMS技術の進化、およびタッチスクリーンコントローラICや低消費電力RF技術などの開発が必要」とのことで、こうした複数分野に対し、全方位で開発を進めているとする。
さらなる成長に向けた6つのMEMS&センサ技術群
また、「近い将来、2015-16年にはタブレット/スマートフォンにはモーションセンサ・環境センサ、アコースティックセンサの3つのセンサに対するハブが搭載され、ハブを介して無数のセンサが搭載されるようになる」とし、すでに1モジュールでマイクロフォンとスピーカが搭載されたアコースティックセンサハブの提供などを進めていることを明らかにしたほか、2種類のセンサハブを組み合わせる「MEMSフュージョン・エンジン」の開発を進めており、これにより新たなユーザー体験が提供できるようになるとした。
新たなセンサが生み出され、それらのセンサがハブを介して1つのモジュール上で提供されるようになることで、機器の小型・高性能化がさらに進むこととなる
さらに重要地域とした日本については、「日本のカスタマは最新技術を積極的に活用している。そうした意味では、マーケティングをするよりも日本に来て、カスタマと多くの意見を交わし、彼らと協力して新しい製品を開発した方が良い。現に、そうしたカスタマとの連携により、さまざまな製品が開発されており、現在ではコンシューマにとどまらず、カーエレクトロニクス分野などにもコラボレーションの範囲が拡大している」と半ば冗談ともとれる説明をしたが、日本企業との連携により、ゲーム機をはじめとして新しい形のマンマシンインタフェースが生み出され、今ではそうした分野はコンシューマだけに限らず、ヘルスケア/医療、産業などの分野にも拡大しており、そうした新分野でも主要なカスタマは日本に多く、やはりイノベーションを生み出す源泉となる地域としたほか、「日本のカスタマの協力がなければ、ここまでSTのMEMSビジネスの拡大はなかった。そうした意味では、今後も重要マーケットとして位置づけし、カスタマとの連携強化を図っていく」と説明した。
ちなみに、同社のMEMS開発チームは「七転び八起き」をモットーに製品開発を進めているとのことで、製品開発を他分野に広げつつも、開発速度を高めることで、例え1つの製品のニーズがそれほど高くなかったとしても、別の製品でカバーすることで、トータルの売り上げ拡大につなげることが可能だ、との見方を示しており、今後、IoTの普及とMEMSの融合により、スマートな健康管理やスマートホーム/ビル化によるエネルギーの適切監視、物流や工場の自動化などが実現できるようになるとし、「センサこそが半導体企業の成長を下支えする基盤となる」と、MEMSビジネスの力強い成長が同社全体のビジネスの拡大につながることを強調した。
MEMS/センサ技術の発展がIoTの普及を加速させ、さまざまな分野をスマート化させることとなるというのが同社の主張
なお、同社の日本地域の半導体ビジネスの売上高は現在、10億ドルを突破しているが、MEMSビジネスを中心に事業の拡大を図ることで、5年後には売上高を20億ドルにまで拡大したいとしている。
STとスイスSound Chipが共同で開発したノイズキャンセル用評価ボード。基板中央に搭載されているのはDSP
ヘッドホンのスピーカーの手前にある基板に搭載されているのがノイズキャンセル用のマイクロフォン。同マイクはカナル型でも用いられているという
市販のタブレット(ASUSのNexus 7)にホバリング機能を内蔵したタッチスクリーンコントローラICを搭載したデモ。2cm程度の距離で浮いた状態でシングルタッチに対応することが可能(パネルに触れるとマルチタッチに自動的に切り替わる)。これの用途としては、分厚い手袋などをはめたままでのタブレット/スマートフォン利用などが想定されているという