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九大、植物の気孔開口に必要なK+チャネルの働きに必要な転写因子を発見
九州大学(九大)は6月18日、植物の気孔の開口に必要なカリウムイオン(K+)の細胞膜上の取り込み用通路となる「K+チャネル」の働きに必要な転写因子として「AKS」を発見し、このタンパク質がなければK+チャネルの数が減少し気孔開口が阻害されることを示すと同時に、植物が水不足に陥ると、植物ホルモン「アブシジン酸」の作用によりこのタンパク質の働きが抑えられ、水の消費を抑えるのに役立つことを発見したと発表した。
成果は、九大大学院 理学研究院の島崎研一郎教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、6月18日付けで米オンライン科学ジャーナル「Science Signaling」に掲載された。
植物は地上に根を張って生活しているので、絶えず変動する環境に応じ、自身を変化させてその条件に適応する必要がある。植物の気孔は開口することによって光合成によるCO2固定を可能にする一方、水の消費を調節する陸上植物に必須の器官だ。気孔は環境応答能を最もよく発達させた器官であり、その働きは陸上植物の生存領域の拡大に大きく寄与してきた。気孔その働きは、それを構成する「孔辺細胞」によるものであり、同細胞の働きを調べることは植物の機能を知る上でとても重要な課題だ。
研究チームは今回、孔辺細胞に特異的に存在するタンパク質としてAKSを発見し、質量分析を行ったところにAKSが「転写因子」であることを究明した。なお転写因子とは、遺伝子の特定領域(調節領域)に結合し、その遺伝情報をタンパク質に発現させる仲介をする一群のタンパク質のことだ。
AKSは特定の遺伝子に結合しており、その遺伝子が気孔開口に必要なK+チャネルの遺伝子であることも突き止められた。つまり、このタンパク質の存在によって、K+チャネルがタンパク質として機能する(気孔開口を行う)ことが可能となるということだ。
また植物が乾燥条件に置かれると、アブシジン酸の働きによって、AKSが遺伝子から外れ、K+チャネルの働きを抑えることも確認された。つまり、AKSは植物が水に恵まれている条件では光合成を増大させて植物の成長に寄与し、乾燥条件では植物を枯死から守る働きがあることがわかったのである(画像1・2)。
AKSの働き。画像1(左):水に恵まれている条件では気孔を開いて光合成を増大させて植物の成長に寄与。画像2(右):水不足の場合は気孔を閉じることで乾燥による枯死に至らないように働く
なお、植物の体内において重要な働きをしているAKSは、構造の類似するものがさらに3つ存在することから、今後の課題は、それらの転写因子が新たな働きを持っているのかどうかを解明することだという。研究チームはこれらの成果を合わせることで、気孔の素早い開口と閉鎖を備えた植物を作出し、砂漠でも生育できる植物の育種に役立てていきたいとしている。