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京大など、中国の食品で残留性有機汚染物質が増加していることを確認

京大など、中国の食品で残留性有機汚染物質が増加していることを確認 

 京都大学などで構成される研究グループは、残留性有機汚染物質「短鎖塩素化パラフィン(SCCPs)」が、中国の食品における含有量が増加していることを確認し、中国から日本に輸入された食用油でも短鎖塩素化パラフィンを検出したことを発表した。

 同成果は、京都大学(京大)の小泉昭夫 医学研究科教授を研究代表者とする厚生労働科学研究食品の安心・安全確保推進研究事業「食の安全に資する継続的モニタリングシステムの構築と早期検知に向けた研究班」と京大医学研究科の人見敏明氏、北京大学の王培玉氏、島津テクノリサーチの高菅卓三氏、松神秀徳氏による共同研究として、京大の原田浩二 医学研究科准教授を筆頭著者として、米国化学会誌「Environmental Science and Technology(環境科学技術)」(電子版)に掲載された。

 日本の食物自給率は低く、カロリーベースで40%しかないため、食糧の多くを中国などの海外に依存している。近年、輸入食品を含めた「食の安全」が取りざたされており、安心を担保するための食糧および母体の曝露の反映である母乳の化学物質の汚染状況を長期監視が求められている。京大でも残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants:POPs)のヒト暴露の長期モニタリングのために、試料バンクを2003年に創設している。これは日本国内のみでなく、アジア地域で得られた食事試料、血液試料、母乳試料も含んでいるが、今後、食品の輸入の増加により、国内のモニタリングのみでは十分に曝露の評価、予測ができなくなることが予想され、そのためにも近隣諸国での試料を得て、各国での食品を介した化学物質曝露の現状、変遷について情報を得ることが必要であると同大では指摘している。

 カネミ油症を引き起こしたポリ塩化ビフェニル、焼却に際して発生するダイオキシンなどのPOPsのうち、脂溶性の化学物質は、環境に放出されたのち、生態系で一部は分解などを受け生態系から除去されるが、その多くは生態系で生物濃縮される。特に食物連鎖で最も高位置に属するヒトは、食物、大気、飲料水を介して曝露される結果、長期間にわたり体内の脂肪組織にそれらが蓄積されることとなる。

 今回、研究グループが調査を行った短鎖塩素化パラフィン(SCCPs)は、現在残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約で規制対象とするべきか検討されている化学物質。短鎖塩素化パラフィンは塩化ビニルへの可塑剤、プラスチックなどの難燃剤として添加されるほか、金属加工潤滑剤として使われていたが、日本では生物濃縮性が高いことから化学物質審査規制法で2005年2月に第一種監視化学物質として指定された。その結果、日本では自主規制により金属加工潤滑剤としての使用は2007年以降報告されていないが、中国では経済成長による金属加工、プラスチック生産の増大で、塩素化パラフィン生産量は10年間で10倍以上となり、2008年で45万トンの生産量が報告され、世界最大の生産国となっている。

 中国での塩素化パラフィン生産量の推移

 こうした生産量の拡大による食品汚染が懸念されたことから、研究グループでは中国、韓国、日本で1990年代と2009年に収集された食品試料を用いて、各国のSCCPsの比較評価を行った。その結果、中国の食事から1日摂取量として平均およそ50μgと、他のPOPsに比べても高い摂取量となるSCCPsが検出された。1990年代との比較も行ったところ、SCCP摂取量は1993年から2009年まで2桁上昇していた(2009年で体重1kgあたり平均1日620ng)。北京でのSCCP摂取量の上位95パーセンタイル推定値は体重1kgあたり1日1200ngとなり、経済発展に伴い増えたことが示唆された。また、ソウルでは、1994年の試料では検出可能な量のSCCPを含んでいなかったほか、2007年でも5検体のうち1検体でSCCPsが検出されたのみであった。

 一方、日本では、1990年の20検体中14検体、2009年20検体のうち13検体で検出された。これら2つの調査年間でSCCPs摂取量は変化しておらず、SCCPsの使用量が減少したにもかかわらず食品からの摂取量は体重1kgあたり平均1日54ngと、減少は見られなかった。

 これらの結果を受け、予備的証拠ながらも汚染された食品の種類と汚染源の調査を必要があると研究グループでは考え、食品中のどの成分にSCCPsが含有されているのかを調べたところ、試料中の脂質含量が増えるとSCCPs含有量が増加するという解析結果から、油脂類が汚染されていることを予想。実際に、中国の市場に出回っている油脂類を調査した結果、油1g中最大7.5μg、1日摂取量として最大245μgの汚染が見つかった。製品ごとに含有量に大きなバラつきはあったものの、油脂によるSCCPsの摂取が大きな割合を占めていることが明らかとなったほか、中国から日本に輸入された食用油でも同程度のSCCPsが検出されたという。

 1990年代と2009年の食品中の短鎖塩素化パラフィンの比較

 なお、工業用製品であるSCCPsが食用油に混入する経路については、今後の調査が必要であると研究グループでは指摘しており、今後、大気を介した越境汚染、食糧輸入による曝露への影響の評価を予定しており、共同研究機関である北京大学とも協力して、追跡評価していく計画としている。

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