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低出生体重児への手あてには脳血流増を抑える効果がある
低出生体重児の全身を医療従事者が両手で包み込む「手あて」の様子
近畿大学医学部附属病院は、医療現場で長く行われ、新生児を落ち着かせたり安心させたりする効果があると言われてきた動作「手あて(ホールディング)」(出生時の体重不足から集中治療室で保育される「低出生体重児」に対して採血などの不快な刺激を与えるときに、その新生児の全身を両手で包み込む行為)の効果を科学的に検証したと発表した。
同成果は同大医学部附属病院リハビリテーション部の本田憲胤 理学療法士らによるもの。詳細は2012年7月22日発行の学会誌「Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed」(電子版)に掲載された。
出生時の体重が2500g未満の新生児は「低出生体重児」と呼ばれ、生命機能の未熟さに起因する合併症を避けるため、新生児特定集中治療室(NICU)で保育されるのが現在では一般的だ。しかしNICUは母胎内とは異なり、治療機器の騒音や採血による痛みなど、児にとって快適ではない環境のため、正常な発育・発達阻害や、発達障害などにつながる可能性が指摘されていた。またそうした不快な刺激による生体反応として児の脳内で血流が増加するが、こうした状況が頻繁に起こることは、低出生体重児の脳の成長に影響を与え、脳容積の低下を招くリスクがあるとも言われていた。
今回の実証実験では、睡眠中の低出生体重児10人に対し、ボールペンの先で1秒ほど軽く突く程度の軽微な痛覚刺激をかかとに与え、近赤外光脳計測装置(光トポグラフィ)にて脳血流の変化を測定した。その結果、脳内の前頭前野と感覚運動領域での血流が平常時の約10倍に増加することを確認。その一方で、同じ刺激を与えながら手あてを施した児では、脳血流の増加が平常時の半分以下に抑制されていることも確認されたという。
この現象について本田理学療法士は「痛覚とは異なる心地よい刺激が加わることで、痛みへの生体反応が緩和されているのだろう」とコメントしているほか、今回の研究成果について日本ディベロップメンタルケア研究会会長である仁志田博司 東京女子医科大学名誉教授は、「急速な脳の発達期にある早産児はNICUという子宮内とは異なった環境にさらされている。児に対するタッチケアやスキンシップなどの働きかけ(良い刺激)は、脳機能・心にポジティブな作用をおよぼすといわれてきたが、それが初めて科学的に証明されたこととなった」とコメントしている。
なお、本田理学療法士は今回の検証結果について「これを契機に、低出生体重児に対する手あてが、NICUにおける標準的ケアとなることを期待している」と語っている。
大脳皮質脳血流の比較