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国立天文台、すばる望遠鏡で撮影した土星のスペクトル画像と分析結果を公開

国立天文台、すばる望遠鏡で撮影した土星のスペクトル画像と分析結果を公開 

 国立天文台は10月8日、すばる望遠鏡で撮影した土星と輪のスペクトルの画像とその分析結果を公開した。撮影と公開された画像作成は、ハワイ観測所(すばる望遠鏡)の田実晃人氏によるものだ。

 太陽系の惑星の中でも、小望遠鏡でも環を持った姿が見られる土星は最も馴染みがあり、地球を除いた7惑星の内でも人気が高く、知名度のある惑星といっていいだろう。画像1は、その土星本体と環に沿って分光器のスリットを当てて観測されたスペクトル(波長ごとの光の強さの分布)だ。

 土星が発する光は基本的に太陽光を反射したもので、そのスペクトルからは土星の速度や運動がわかる。ちなみに、スペクトルにはやや斜めの縦方向に暗い線が太いもの細いもの何本も見えるが、これは太陽光に含まれる暗線(光が吸収される波長)を表したものだ。最も太く見える暗線は水素によるもので、「バルマー線」の1つだ。

 画像1。土星のスペクトル。すばる望遠鏡高分散分光器(HDS)による観測結果。左はHDSのスリットビュワカメラを用いた土星全体の画像。本体(中央)の上下に環のスペクトルも写っている。ハワイ時間2011年7月19日に撮影。(c) 国立天文台

 土星本体のスペクトルの暗線が傾いている理由は、土星の片側(上側)が地球に近づき、反対側(下側)が地球から遠ざかっていることにある。つまり、土星の自転によってこのようなスペクトル線の傾きが生じているわけだ。

 その波長差から、スリットを当てた赤道付近は秒速約10km/sで回転していることがわかる。理科年表によれば、土星の赤道半径は約6万km、自転周期は約10.6時間ということなので、これから計算される赤道付近の自転速度は秒速9.8km/sとなる。「土星表面」のどこで測定するかによって速度は変化するため、結果はよく一致しているといっていいだろう。

 一方、環のスペクトルを見て見ると、上側と下側で波長がずれていて、土星本体の自転と同じ向きに回転していることがわかる。ただし、それぞれの環のスペクトルにも少し傾きが見られ、それが本体とは逆になっている点が特徴だ。つまり、環の外側は内側よりもややゆっくりと回転していることがわかるのである。

 さらに土星本体のスペクトルをより詳しく見ると、実は他にも2種類の光の吸収線が見てとれる(画像2)。傾きがなく縦にまっすぐになっているものは地球大気による吸収線だ。

 画像2。土星のスペクトルの詳細。地球大気による吸収線、太陽光の反射に見られる(太陽表面で作られた)吸収線、太陽光の反射の際に土星表面で作られた吸収線の3種類が、異なる傾きで写っている。(c) 国立天文台

 一方、傾きの大きい吸収線は前述したように太陽のスペクトルであり、土星表面で反射された結果、自転運動の効果が2倍効くために傾きが大きくなる。中間の傾きの吸収線は、土星表面のガス(メタンやアンモニアなどの分子)によって作られる吸収線で、これには自転運動の効果がそのまま効いているというわけだ。

 このように、高波長分解能観測は天体の運動や大気での光の反射・吸収といった、天文学に不可欠な情報を明瞭にしてくれる、有用な観測手段なのである。

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