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小惑星イトカワは20kmの母天体が壊れて再集合したもの…初期分析で明らかに (1) イトカワの元となった母天体のサイズは約20km!
小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰ったサンプルに関する6論文が、8月26日発行の米科学誌「Science」に掲載された。小惑星イトカワの形成プロセスや将来の姿など、興味深い事実が明らかになっている。
東北大学(宮城県仙台市)で記者会見した研究者。左から、圦本尚義・北海道大学教授、長尾敬介・東京大学教授、中村智樹・東北大学准教授、土`山明・大阪大学教授、海老原充・首都大学東京教授、野口高明・茨城大学教授、上野宗孝・JAXA/ISASプログラムオフィス室長
「はやぶさ」カプセルのサンプルキャッチャーからは、すでに1,500個以上の微粒子が見つかっている。電子顕微鏡の観察により岩石質と特定された微粒子の一部を使って、2011年1月より初期分析が開始されており、その成果を論文にまとめた。初期分析はまだ続いており、来年には詳細分析の国際公募も実施される予定だ。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、東京事務所で記者会見を開催。向井利典・JAXA技術参与は、「コンテナを開封したときに何も見えなくて、一体どうなるかと心配した状況からすると、夢にも思わなかったような面白い成果が出た」と喜び、「肉眼でも見えないような小さな微粒子から、よくこれだけの成果が出せた」と最新の分析技術を讃えた。
また東北大学(宮城県仙台市)には、各論文の主著者が集まり、それぞれの論文について概要を説明した。各論文の概要は以下の通り。
「小惑星イトカワの微粒子: S型小惑星と普通コンドライト隕石を直接結び付ける物的証拠」
東北大学の中村智樹准教授らは、放射光X線回折と電子顕微鏡によって、大きさ30~150μmの微粒子38個の鉱物を分析した。放射光X線による分析には、高エネルギー加速器研究機構(KEK)や大型放射光施設「SPring-8」の設備が利用された。
放射光X線回折による分析では、微粒子を構成する鉱物の種類と比率が明らかになった。カンラン石、カルシウムが少ない輝石、カルシウムが多い輝石、斜長石が多かったが、さらにこの化学組成も調べたところ、特徴が普通コンドライト隕石のLL型と非常に良く一致することが分かった。
鉄とマグネシウムの比率から見ると、普通コンドライト隕石のLL型に一致
小惑星が地球に落ちて、地上で見つかったものが隕石である。最も多くありふれた隕石が普通コンドライトで、小惑星帯の内側に最も多く分布しているのはイトカワが属するS型小惑星。こういった関係から、S型小惑星が落ちて普通コンドライトになると推測されてはいたが、隕石はどこから来たのか分かっていないため、直接的な証拠がなかった。「はやぶさ」は初めて、この関係を直接証明したのだ。
また電子顕微鏡による分析では、微粒子のうち8割(32個)が加熱による影響を受けており、残る2割(6個)はあまり影響を受けていないことが分かった。輝石に含まれるカルシウムの比率は加熱温度によって変わることが知られており、これからすると加熱された温度は800℃程度だったと推測される。また溶融による発泡など、強い衝撃の痕跡と考えられるものも見つかった。
加熱を受けた場合には右の粒子のように、元素分布は均一になるという
これらの事実から考えられるイトカワ形成のシナリオは――(1)原始太陽系でチリやガスが集まって母天体を形成、(2)直径20km程度にまで成長し、放射性元素の崩壊熱により内部が高温に、(3)冷えて固まった後、別の小惑星が衝突して母天体を破壊、(4)砕け散った破片のほとんどは宇宙空間に散逸、(5)その一部が再集合して、小さくて変な形の小惑星を形成、(6)宇宙風化により表面が黒ずんだ現在のイトカワの姿に――というものだ。
イトカワ形成の歴史。母天体が破壊されて再び集まったと結論づけられた
初期分析に使った微粒子のうち、加熱されたものは母天体の内側に、加熱されなかったものは比較的表面近くにあったのではないかと考えられている。加熱されていない微粒子には、原始太陽系星雲の情報が残されている可能性がある。母天体が破壊された時期については分かっていないが、今後の詳細分析により解明されることが期待される。