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慶応大、スピン流量が絶縁体中のマグノンの寿命により決定されることを解明
慶応義塾大学(慶応大)は12月9日、磁気の流れであるスピン流の増大原理を世界で初めて明らかにしたと発表した。
同成果は、同大 理工学部の安藤和也専任講師らによるもの。詳細は、英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。
磁気の流れであるスピン流を利用することで次世代の省エネルギーデバイスの実現を目指すスピントロニクスに関する研究が近年世界的規模で進められている。スピン流が示す最大の特徴は、電流を流さない絶縁体中でもマグノンと呼ばれるスピンの波を利用できる点にあり、この性質を利用することで、電流だけでは実現不可能だった新たな原理のデバイスを生み出せると期待されている。
今回、研究グループは絶縁体から金属へと流れ出すスピン流を精密に測定することで、スピン流量が絶縁体中のマグノンの寿命によって決定されていることを明らかにした。これは、寿命の長いマグノンを作り出すことでスピン流を増大できるという、これまで未知であったスピン流の増大原理を解明したものである。
今回の発見は、スピン流利用技術の基盤となる知見であり、電流の代わりにスピン流を用いることでエネルギーロスを極限まで抑えた次世代省エネルギー電子技術への大きな推進力となることが期待されるとコメントしている。
スピンの波であるマグノンは、数百ナノ秒の有限の寿命を持っている。今回、(a)のように、絶縁体である磁性ガーネット薄膜の高品質表面に白金(Pt)薄膜を成膜し、絶縁体から流れ出すスピン流の大きさとマグノンの寿命を同時に測定した結果、寿命の長いマグノンを作り出すことで白金に流れ出しているスピン流も増大することが見出されたという。(b)と(c)はそれぞれスピン流とマグノンの寿命の測定結果。マグノンの励起周波数を小さくしていくと、スピン流量とマグノンの寿命が共に増大し、両者の間に強い相関があることが分かる