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東北大、グラフェンナノリボンの合成・集積法を開発 -次世代デバイスに期待
東北大学(東北大)は9月10日、炭素原子1層の厚みからなる2次元グラフェンシートが1次元リボン構造となった状態のグラフェンナノリボンの合成・集積方法を開発したと発表した。同成果は、同大 大学院工学研究科 畠山力三名誉教授、加藤俊顕助教らによるもの。詳細は、英国科学誌「Nature Nanotechnology」のオンライン版に9月9日(現地時間)付けで掲載された。
グラフェンシートは、キャリア移動度が20万cm2V-1s-1という優れた電気伝導特性の他、柔軟な機械的構造、高い光透過性を併せ持つ次世代の炭素ナノ材料として注目を集めている。一般に、グラフェンシートは2次元シート構造をとっており、バンドギャップを持たない金属的振る舞いをする。これに対し、グラフェンシートがナノオーダーの1次元リボン構造(グラフェンナノリボン)をとると、グラフェンシートに有限のバンドギャップを発現させ得ることが近年明らかにされていた。このため、グラフェンナノリボンは半導体デバイスの応用分野において注目を集めている材料となっている。しかし、グラフェンナノリボンの構造(リボン幅や長さなど)を制御して合成する手法、および基板上の狙った位置と方向に合成する技術は開発されておらず、グラフェンナノリボンを集積化する際の大きな課題となっていた。
今回研究グループは、急速加熱拡散プラズマ化学気相堆積法ならびにニッケルナノバーを開発することでグラフェンナノリボンの合成に成功した。急速加熱拡散プラズマ化学気相堆積法では、中性原料ガスを電気的作用により分解し、化学的反応性に富んだ活性種を多量に合成することが可能なプラズマ化学気相堆積法(特にプラズマ中の高エネルギーイオンによる損傷を極限まで低減することのできる拡散プラズマを利用)と、試料を短時間で高温状態まで加熱する急速加熱法を組み合わせることにより、従来とはまったく異なる反応場を作り出すことに成功。また、ニッケル自体をナノスケール化して、その微細ニッケル構造(ニッケルナノバー)を反映させたグラフェンナノリボン合成が発案された。
このニッケルで作られたナノバー構造を触媒材料として使用し、急速加熱拡散プラズマ化学気相堆積法を行った結果、ニッケルナノバー中のニッケル原子が部分的に徐々に蒸発するとともに、蒸発部から優先的にグラフェンナノリボンが析出することが見出された。また、同手法を用いて、あらかじめニッケルナノバー構造を任意の形状に配列することで、グラフェンナノリボンを基板上に直接所望の配位で合成することに成功したという。
プラズマ化学気相堆積法と急速加熱法を組み合わせた独自プロセス
さらに、同手法で合成したグラフェンナノリボンの電気伝導特性を精密に評価した結果、電流オンオフ比が1万以上の高性能半導体デバイスとして動作することが実証された。これらの成果は、グラフェンナノリボンを利用した半導体デバイスの集積化の実現に大きく寄与するものであると研究グループでは説明している。
これまで同様の炭素ナノ材料として注目を集めてきた、1次元炭素ナノ物質であるカーボンナノチューブの場合は、1:2の割合で金属的ナノチューブと半導体ナノチューブが混在してしまう問題があった。半導体デバイスに金属的物質が混入するとデバイス性能を劣化させてしまうが、グラフェンナノリボンの場合、すべてが半導体的性質を持つため、金属混入の懸念が無い。また、リボン幅が数nmオーダーの微細構造であること、2次元グラフェンシートと同様に高いキャリア移動度、光透過性、機械的柔軟性などを併せ持つ材料であることから、今後、次世代超高密度集積デバイス、高性能フレキシブル有機デバイス、さらにはナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)などの新概念デバイスの実現が期待できるとコメントしている。