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速さにこだわる報道の終わり 読者と協業、価値向上

 速さにこだわる報道の終わり 読者と協業、価値向上

 

  長らくニュースメディアが扱う情報の価値の一部は速さにあると考えられていた。報道機関はどの社よりも速く情報を伝えるためにしのぎを削ってきた。だが、ソーシャルメディア時代になって情報の価値は速さから大きく変化している。情報価値がユーザーとの共同作業によって高まっていくという現象が起きている。

 

 ■オープンジャーナリズムという取り組み

 

 英紙ガーディアンが「オープンジャーナリズム」のプロモーションのために制作した動画の続編

  窓ガラスを割り、三角屋根の住宅に突入する武装した警察官が、建物の中にいた3匹の豚を拘束する。緊迫した現場からリポートする記者。これは英国の高級紙ガーディアンが「オープンジャーナリズム」のプロモーションのために制作したものだ。童話「3匹の子豚」をモチーフにした動画は220万回以上も再生されて話題となった。

  もう少し動画の中身を説明したい。ソーシャルメディア上では、手荒い逮捕に批判が起き、人々によって事件の調査が行われる。YouTube上にアップされたバス車内のカメラ映像から、狼がぜんそくだった可能性が判明する。ガーディアンは、狼が息を吹いて家を吹き飛ばせるかシミュレーションを行い公開。人々の調査はソーシャルメディア上でさらに進み、子豚たちが生活苦で保険金殺人に手を染めたことが明らかになる。そして、格差という社会問題が浮かび上がりデモに発展していくのだ。

 

 英紙ガーディアンが「オープンジャーナリズム」のプロモーションのために制作した動画

  ソーシャルメディアの登場で事件や事故の現場からの第一報は既に、一般の人々のほうが速い。パリの地下鉄で起きた、黒人男性に対する乗車拒否も、ホームにいた別の人によって映像に収められていた。差別行為を行ったグループが、イギリスのサッカーチームのファンであることも分かった。

  ガーディアンの動画はさらに先に進んだ世界を示す。動画の中で、ガーディアンは、ソーシャルメディア上で進む人々の調査を整理し、検証していく。ジャーナリストの小林恭子氏は、オープンジャーナリズムの重要性を「共同作業と参加を通じて、読者との関係を直接深める点にある」と指摘している。だが、筆者がマスメディア関係者とガーディアンのビデオについて話すと、ソーシャルメディアを使った取材に議論が集中し、「共同作業や参加」が十分に理解されていないように感じる。

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