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高野文子が初めて手掛けた絵本『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』
木々に小さな新芽がのぞきはじめたこの街に、メイドが営む私設図書館がありました。
そこには書架を守る司書メイドがいます。ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。
今日はミソノからメイドへ、本をおすすめするようですよ。
●高野文子が初めて手掛けた絵本『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』
この前の楽しかったデートからあまり経っていないですけど、もう春ですねぇ。
春ですねー。日差しが暖かくて。
でも、思ったより風が冷たくて、びっくりして首をすくめちゃう日もあるでしょ? 今日は、まだまだ寒いこんな季節に似合う絵本を開いてみませんか。
おふとんの絵本ですか。「さん」が付いているってことは擬人化ですか?
いえいえ、確かにおふとんやまくらに顔は付いていますが、擬人化ではありません。あくまで彼らはおふとんの形、まくらの形でありながら、私たちを包み込んでくれるんです。
この表紙の男の子がおふとんに入るわけですね。ん? 男の子が何かお願いしています。「あれこれ いろいろ たのみます」ですって。
そうなんです。おふとんに入る時にあれこれ「あさまで ひとつ おたのみします」とお願いしてそっと目を閉じると……。
お返事は「まかせろ まかせろ おれに まかせろ」ですって。なんと力強い!
例えば、手足が冷えませんように……とかけぶとんさんにお頼みすると、「おれにまかせろ」と受け止めてくれます。
このかけぶとんさんの何て穏やかな笑顔! そして、やわらかいピンクのとっても暖かそうな色をしていますね。これなら冷え性の指先もぽかぽかになりそう。
それだけじゃないんです。かけぶとんさんはこうも言っているんです。「ても あしも ひるま ころんで ちのでた ひざも」「なめて さすって あっためて おれが なおしておいてやる」。何て……何て優しく、頼もしいのでしょうか!
かけぶとんさんが、膝をなめている! 言葉だけ聞いたらちょっと妖怪じみてますけど、絵がほんわかしてて、あったかみが伝わってきますね。作者の方って、マンガ家さんですよね。
『絶対安全剃刀』や『るきさん』、最近は『ドミトリーともきんす』を発行されて、ファンも多い方ね。そんな方が、初めて手掛けられた絵本がこの作品なんです。シンプルでいて味わいのある線、整理された画面の中にも感じる奥行き……読み手の心にするっと入り込んでくる不思議なやわらかさが、繰り返される短い言葉の心地よさと一緒に、絵本に濃縮されているように感じます。…