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<子宮頸がん>ワクチンの健康被害 国の救済ストップ
子宮頸(けい)がんワクチン接種後の健康被害に対する国の救済手続きが事実上止まっていることが、関係機関への取材で分かった。現在60人以上が審査待ちだが、最近半年は1件も処理されていない。国の対応が遅れる中、独自に患者の支援に乗り出す自治体も出てきた。
【日本の子宮頸がんの流れ】
子宮頸がんワクチンの接種は2010年秋から各地で始まった公費助成で広がり、13年4月からは法律に基づく定期接種になった。一方、副作用報告が多発し、同年6月に積極的な勧奨が中止された。これまでの接種者は約338万人、2475件の副作用報告があった。
予防接種によって健康被害が起きた場合、入院費などを補償する国の救済制度がある。任意接種の場合は医薬品医療機器総合機構(PMDA)、定期接種は厚生労働省が給付主体になる。
PMDAによると、11~14年度に同ワクチンについて80件の申請があり、結論が出たのは26件(救済18件、不支給8件)だった。しかし、昨年10月以降は不支給も含め決定はゼロで、54件が審査待ちの状態だ。厚労省結核感染症課によると、定期接種では13件の申請があったが、1件も結論が出ていない。定期接種について給付の可否を決める審査会は約2カ月ごとに開かれているが、同ワクチンについては諮問されたことはないという。
審査は実質的に「塩漬け」の状態だが、厚労省の担当者は「書類がそろわないなど個別の事情で諮問できていない」と説明。PMDAの大河原治夫・健康被害救済部長は「新しい薬やワクチンの副作用は専門家の意見を集めるのに時間がかかる傾向がある」と話す。
一方、国に代わって自治体が支援を進めるケースが広がり始めた。毎日新聞の調べでは▽東京都杉並区▽横浜市▽北海道美唄市▽北海道恵庭市▽茨城県牛久市▽東京都武蔵野市--が副作用被害者の治療費助成制度を設けている。昨年6月から医療費の自己負担分と医療手当(最高で月3万5200円)の支給を始めた横浜市は、今年2月末までに15人に計約730万円を助成した。
今年度中の助成開始を目指す愛知県碧南市の担当者は「国の動きを待っていたが、いつまでたっても動かない」と指摘。武蔵野市は「本来は国が救済すべきだが、市内にも被害者がいることが分かり『何かやるべきだ』との声が高まった」(健康課)と話し、接種者全員の追跡調査にも着手した。
医師で弁護士の大磯義一郎・浜松医科大教授(医療法学)は「副作用の診断基準がはっきりしない中での判断は難しい面もあるが、健康被害を幅広く補償するのが救済制度の趣旨で、因果関係は厳密な証明ができなくても認めるべきだ。緊急支援として自治体が患者の実費負担分を支給するのは意義がある」と話す。【清水健二、円谷美晶】
◇翌日に失神…まひ続く20歳 母「何とか自立できるまでには」
「どうすれば治るか分からないのがつらい。娘の人生はこれから。何とか自立できるまで回復してほしい」
埼玉県ふじみ野市に住む女性(20)の母(55)は、娘の体調が改善しないことに不安を募らせる。女性は2011年3月、2回目の子宮頸がんワクチンを接種した翌日に失神して以降、右手足のまひ、記憶障害、視野の欠損などの症状に苦しんできた。生理も1年半前から止まったままだ。
20カ所以上の医療機関を受診し、支払った医療費や交通費は230万円を超える。副作用を疑うようになったのは症状が出てだいぶ後だったが、「ワクチンのせいだと思い込むから悪くなる」と、冷笑する医師もいた。
13年8月、PMDAに被害救済を申請したが、その後は問い合わせても「審査中」の一点張り。PMDAは救済業務の迅速化を経営目標に掲げ、13年度は子宮頸がんワクチン以外も含めた全体の85%の審査を申請から8カ月以内に終えたとしているが、同じ症状で連絡を取り合う母親間で決定が出たという話は聞かない。
女性は今春、大学の福祉系学部に進学した。大学のサポートはあるが、家族の送迎と車椅子は欠かせない。「原因がはっきりしなくても、実際に苦しんでいる患者がいる以上、国は治療の支援をしてほしい」と母は訴える。【清水健二】