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1300万人支える武蔵水路、脱・老朽化で防げ「東京砂漠」
国内各地で、将来を見据えたインフラの整備事業が進んでいる。山では迫り来る自然災害に備え、都市では国際競争に打ち勝てるような力を高め、地方では人を呼び集めてにぎわいを生み出す――。このように現状の社会的課題を高度に解決し、新しい日本を構築しようという事業は少なくない。連載「日本大改造」では、今後のインフラ整備の指針となりそうな事業に着目し、日本の社会基盤を人知れず支える現場の実像に迫る。第4回は、東京都と埼玉県で合計1300万人の都市生活を支える「武蔵水路」の改築工事を取り上げる。
上底が16.7m、下底が8m、高さ2.9mの標準断面を持つ水路を、水資源機構が横約11.5m、縦約2.9mの長方形断面の中央に垂直隔壁を設けた水路に造り替えている。埼玉県内を流れる「武蔵水路」の改築だ。
二つの円グラフは2007年度水道統計などを基に、水資源機構武蔵水路改築建設所がまとめた結果。供給区域の人口は約1300万人に達する
資料:水資源機構
この長さ約14.5kmの水路、地味な存在ではあるものの、重要度は極めて高い。東京都と埼玉県で合わせて約1300万人もの都市生活を支える水を運ぶ施設だからだ。利根川の水を荒川に引き込み、主に東京・中西部地域の水供給に寄与している。
同水路は都市を支える大動脈であるにもかかわらず、二つの致命的な問題を抱えていた。一つは老朽化だ。1967年に完成した水路は、施設の経年劣化や周辺地盤の沈下などに伴って縦断勾配の変化や通水断面の減少が発生。通水能力が建設当初の毎秒50m3(立方メートル)から約3割も低い、毎秒37m3まで低下していた。
資料:水資源機構
もう一つは耐震性能だ。水路は1964年の東京五輪前後、東京が砂漠と形容されるほど長期間の水不足に陥っていていた頃に整備された。水路部は地盤を台形状に掘削した表面に厚さ15cmの無筋コンクリートを打っただけの構造だ。現状で想定されるレベル2地震動に対する耐震性を照査したところ、鉄筋入りで、より強度の高い水門部などですら、耐震性が不足していた。
そこで、施設を再構築することによって、通水能力を回復させるとともに、武蔵水路の位置する箇所で想定される震度6強相当の揺れを受けても、機能を失わないような耐震性を持たせるようにした。
改修前の武蔵水路。国道125号バイパス行田大橋から下流側(写真:水資源機構、以下同じ)
上の写真に示す水路を改修したもの。写真に示す中流部は鹿島が施工を担う