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78歳の高校生「後悔ない」 1年で退学も“心の卒業” /千葉

78歳の高校生「後悔ない」 1年で退学も“心の卒業” /千葉

昨年4月に県立木更津東高校の定時制に入学した木更津市桜井の宮内哲さん(78)が、体調面の不安から今月いっぱいで退学することになった。卒業はかなわなかったが、母親と約束した“夜学”での高校生活を1年間、全うすることができた。宮内さんは「心の卒業を迎えられた。後悔はない」と晴れやかな笑顔を見せた。

【77歳の高校生誕生】 「時代に付いていきたい」 宮内さん、木更津東高入学

 7歳の時に父親が戦病死した宮内さんは、貧しさで高校に進学することができず、中学を卒業した15歳の時に、遠い親戚を頼って新潟県から上京し働き始めた。

 高校へ通わせてやれないことを悔やんでいた母親とは、「東京で夜学にでも通うよ」と言葉を交わして別れた。「さみしい中学の卒業だった。それ以来、卒業式の時期になると、どこか嫌な気持ちになっていた」。そんな心のわだかまりが、念願の高校生活で払拭(ふっしょく)された。

 入学した商業科では、孫ほども年の離れたクラスメートとともに学業に励んだ。耳が遠いため補聴器や録音機を用意し、時には「よく聞き取れません」と書いた紙を掲げて授業についていった。

 新聞配達をしていた10代のころに所長から言われた言葉「反省はしても後悔はするな」を胸に通学を続け、周囲のサポートにも助けられた。学級順位は上位をキープ。宮内さん自身が「これ順番が違ってないですか」と驚いて担任に尋ねるほどだった。

 今年1月の定期検診で体に不調が見つかり、手術のため3月末から入院することに。「授業中に救急車を呼んでもらうわけにもいかない。学校に迷惑は掛けたくない」。休学という選択肢もあったが、退学を決意した。

 「まじめな方で何の問題もなく2年生に進級できた」(同校)だけに、周囲からは退学を惜しむ声も寄せられた。それでも、宮内さんは「残念と言えば残念だが、心がすっきりしている」と、意外なほど明るい表情を見せる。卒業シーズンになると去来していた中学卒業時の“トラウマ”は、すでに無くなっていた。

 24日の終業式が最後の登校となった。「やるだけのことはやった。後悔はない。1年間でも通うことができて本当に良かった」。笑顔は充実感に満ちあふれていた。

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