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KASTなど、ロボット技術を応用した「自動人工細胞膜形成システム」を開発
神奈川科学技術アカデミー(KAST)は6月17日、東京大学、理化学研究所生命システム研究センター、光産業創成大学院大学、慶應義塾大学との共同研究により、MEMS技術を利用した「液滴接触法」による「自動人工細胞膜形成システム」で、人工細胞膜をマイクロチップ上に高速・大量に作製すること、さらに分注ロボットを用いてこの人工細胞膜をチップ上に自動でアレイ化することにも成功したと発表した。
成果は、KAST 人工細胞膜システムグループの竹内昌治グループリーダー(東大生産技術研究所の准教授兼任)、同・川野竜司研究員らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間6月17日付けで英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
膜タンパク質は細胞膜中に存在するタンパク質で、細胞への物質の取り込み・排出や薬剤に対する応答に関わることから創薬の重要なターゲットとなっている。しかし、膜タンパク質は主に細胞膜中でのみその機能を保持することから、ほかの水溶性タンパク質のように生体から取り出して試験管内で実験することは困難だった。
また、液滴接触法は、細胞膜の構成要素であるリン脂質を液滴表面に形成し、その液滴2つを接触させることで、人工の細胞膜(脂質二分子膜)を簡便に再現よく形成する技術である。
今回開発された自動人工細胞膜形成システムでは、16個の人工細胞膜にイオンチャネル膜タンパク質1分子を埋め込み(「人工細胞膜チップ」)、その機能をおよそ2時間でスクリーニングすることが可能だ。なおイオンチャネルとは、細胞膜に存在し、受動的にイオンを透過させる膜タンパク質のことである。
そして実際に、人工細胞膜チップを用いて、アルツハイマー病の原因とされるアミロイド-βタンパク質が、「ヒト由来カルシウム依存型カリウムチャネル(h BKチャネル)」の機能を直接阻害することを明らかにすることに成功した。
今回の自動人工細胞膜形成システムは、従来の技術では観測が困難なイオンチャネル膜タンパク質の機能を、多検体で、なおかつ迅速にかつ簡便に、さらに精密に解析できるため、創薬の開発に貢献することが期待されるという。そして研究チームでは現在、同システムを用いて、アルツハイマー病を初めとする神経変性疾患や心疾患などを対象に、創薬への応用に向けた取り組みを進めているとした。
16ch集積チップと分注ロボット。ロボットによる液滴の自動滴下により脂質二分子膜がチップ上に同時に再現よく形成できる