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「紅白が生まれた日」に戦後復興ドラマで“最高のデキ”の評価
NHKが放送90年(ラジオ開始から)を迎え、先週末にやたらとスペシャル番組をやっていた。中でも一番よかったのは土曜夜のドラマ「紅白が生まれた日」だろう。
「紅白歌合戦」の単なるPRドラマかと思って見たら、昭和20年を舞台に、終戦の4カ月後に「紅白」を実現させる新藤放送員(ラジオディレクター=松山ケンイチ)の奮闘を通して描く日本の復興物語で、いいデキだった。しかも、知らない事実がテンコ盛り。
ラジオの放送がGHQの厳しい検閲を受けていたのは周知の事実だが、子供のチャンバラごっこを見て、「(戦争を連想させる)子供の遊びもGHQに禁止されるそうです」と落胆して話していた時に、新藤が「紅白歌合戦」を思いついたという。
そして米国側に企画を出した際に、新藤らは「(勝敗を決めることは)自由競争社会のシンボルです!」「民主主義を体現した番組なんです」「これからは男女がライバルになる時代なんです!」と説明。新しい日本社会の形という趣旨が紅白のルーツだったのだ。
■国民的番組スタートの経緯がよく分かる
だが、「歌合戦(song battle)は戦争をイメージさせる」と米国が却下。「競い合う」という意味を強め、第1回は「紅白音楽試合」という番組名になった。
「多くの人がラジオを聴けば、より日本人を教育できる」という、米国側の真の承諾理由はゾッとさせられるものだったが、ドラマにはGHQへの批判も含んでいる。
そして、水の江滝子と古川ロッパの司会で始まり、並木路子の役で「リンゴの唄」を熱唱したmiwaのうまさもあって、紅白の再現シーンもよかった。大成功した第1回紅白が終わると、放送局の周りにはラジオを聴いた貧しい民衆が取り囲み、「おもしろかったぞ!」と拍手喝采。復興とその後の成長期を勇気づけた国民的番組がスタートした経緯がよくわかった。
時代が違うとはいえ、今の「紅白」は出場者が大手芸能プロのパワーバランスに左右されたり、バカ騒ぎ的なショーアップが行き過ぎている。その傾向は2時間半くらいだった放送時間が4時間以上と長尺になってから顕著だ。
高視聴率を誇った70年代全盛期のように夜9時からの放送に戻して派手な演出は抑えるか、いっそ原点に戻ってラジオだけにしてみたら、歌の良さが伝わるのではないか。
(作家・松野大介)