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アイドル差別化競争に食傷気味!? さんみゅ~に見る80年代回帰
2013年1月に岡田有希子のカバー「くちびるNetwork」でメジャーデビューした7人組アイドルグループ・さんみゅ~。80年代の王道アイドル路線の楽曲を看板に活動して、3年目に突入した。1月の2周年記念ライブでメンバーが1人卒業。7人体制による“第二章”のスタートを切る8thシングル「はじまりのメロディ」がリリースされる。
【動画】さんみゅ~、80年代アイドルソングを語る
今回もミディアムテンポに暖かみのあるメロディで、どこかノスタルジック。<まだ見えない夢の続き>へ歩き出すというジュブナイル感溢れるナンバーになっている。<本当はあの頃 少し怖がってた><強がってばかりで泣き出しそうになった夜は>といったフレーズは、“第一章”を振り返る彼女たち自身とも重なるようだ。
「CDをリリースするごとにランキングがつくじゃないですか。自分たち的に『この順位で良かった!』と思っても、同時に『次の曲で下がったらどうしよう?』とも考えてしまう。そういうのは正直ありました」(長谷川怜華)
「デビューした頃は何でも初めてで楽しかったけど、2年目になると現実の厳しさも知って、つまずくことも増えました。でも、怖さを隠さないのも強さだと思うので。今までは元気でハッピーな私たちを見せてきましたけど、こういう歌詞も笑顔で歌えるようになりました」(西園みすず)
木下綾菜と野田真実は3月で高校を卒業。4月から高校生は最年少の新原聖生だけになり、リーダーの西園は山内遥に続いて20歳を迎える。デビューから2年を経て、個々のメンバーたちの成長も新たなスタートを切る糧になっている。
「みんなと親しくなる前は、うまくやっていけるか不安でした。みっすー(西園)は怖くて(笑)、相談してもたどたどしい会話になっちゃって。今はそんなこと、ないんですけど」(新原聖生)
「昔は話し合いに参加していても、いるだけで言いたいことを全然言えませんでした。今はけっこう言ってる?」(野田真実)
「意見がないか聞いても『みんなと同じ』と言われることが多かったのが、最近は聞く前にあちこちから意見が飛んできて(笑)、前向きな話し合いができるようになりました。前は歌割りでもピリピリしていて、自分のパートが少ないと『私の歌はダメなのかな?』って悩んだり。今はそこに悩むのでは無く、歌詞の意味をどう表現するか考えます」(西園)
「私はどの年代の方とも、このままの自分でしゃべれることがわかりました」(山内遥)
「私は特に『センターだよ』と言われてなくて、何となーく真ん中にいる感じでしたけど、歌にしろ、パフォーマンスにしろ、その中心に立つ機会が多くて、その重要性もわかってきました。だから、『センターという意識を持って頑張っていこう!』という気持ちが生まれました」(木下綾菜)
そんな7人の想いが「はじまりのメロディ」に乗り、歌に気持ちがこもる。
「サビの<手を伸ばしても届かなかった昨日にはもうサヨナラをして>のところがグッときます。『やっぱり前に進んでいかなきゃ』と思って歌っています」(小林弥生)
7人それぞれの“始めたいこと”も聞いてみた。
「英語の勉強です! 大学で観光のことを学びたいので、しゃべれるようになりたくて。さんみゅ~のみんなを海外旅行に連れて行けるぐらいに」(木下)
「ネイルが好きなので、本格的にやりたいです」(野田)
「料理をちゃんと作れる人になりたくて。今は誰かに食べてもらうときに不安なので」(新原)
「車の免許を取りたいです。身分証明書として運転免許を出したら大人な感じだし。小学生のときはカートに乗ると『けっこう飛ばすね』と言われてました(笑)」(西園)
「絵を描くことやものを作ることが好きなので、個展を開けたら」(小林)
「去年取ったスキューバダイビングの免許のグレードを沖縄に行って上げたいのと、パスポートを更新したので、家族や友だちと海外旅行に行きたいです」(山内)
「サッカーを観るのが好きなので、どの選手は何が得意とかわかるぐらい、詳しくなりたいです」(長谷川)
一方、80年代アイドル路線は「これからも大事にしていきたい」と口をそろえる。メジャーデビュー前のライブでは、事務所のサンミュージックの先輩に当たる松田聖子、早見優、岡田有希子らのカバーが中心だったさんみゅ~だが、90年代半ば以降に生まれた彼女たちにとって、80年代のアイドルソングはどう聞こえるのだろう?
「私は母がアイドルになりたかったらしくて、松田聖子さんや中森明菜さんの曲は物心ついた頃から聴いていました。私たちにはむしろ新しく感じます」(西園)
「松田聖子さんのライブDVDを観て、きれいで通る声に憧れました。今のアイドルはダンスをパキパキ踊る方が多いけど、80年代の方は歌がメインで皆さん上手。さんみゅ~も歌をしっかり届けたいと思います」(木下)
「中森明菜さんは若いときからすごく歌がうまくて、目線もカッコよくて」(新原)
「最近の曲とはリズムの取り方やバックの音が違うと思います」(長谷川)
「使っている楽器も違う気がする。最近の曲は打ち込みが多いけど」(野田)
「生楽器の音が入っていて、聴いてると心地いいですね」(小林)
「あと、大胆な歌詞が多いと思います。「くちびるNetwork」の<私を抱きたい?>とか、今の時代に普通に言ったら恥ずかしいじゃないですか(笑)。それを自然にかわいく歌えちゃうところが、80年代の良さだなと思います」(山内)
90年代以降、安室奈美恵やSPEEDの登場からアイドルもダンス系が主流になったが、さんみゅ~はオリジナル曲でも、テンポや振りがゆったりしたものが中心。それが大人のファンには懐かしく感じられ、メンバー自身や若い世代には時代がひと回りして、かえって新鮮。「純情マーメイド」「初雪のシンフォニー」といったタイトルからレトロっぽく、80年代アイドルソングによく使われていたスペクターサウンドの引用も見られる。現在のアイドルグループがひしめき合う戦国時代のなかで、あえてイマドキでない路線がさんみゅ~の存在感を際立たせた。そして最近では、他にも80年代路線を打ち出すアイドルが出てきている。
「一緒に盛り上がっていければと思います。“踊ってなくても音楽は楽しいんだよ”ということを広めたいので」(西園)
「新しいアイドルのジャンルになれたらいいですね。ロック系、ダンス系、さんみゅ~系、みたいな(笑)」(小林)
「80年代風じゃなくて、さんみゅ~風? いいね、それ」(西園)
さまざまなアイドルグループがデビューして、CA、魔法使い、お人形、北欧、ダークファンタジー、銀河系、男装……などあらゆるコンセプトが出尽くした感もある。アイドルファンもそうした差別化競争には食傷気味で、時代に依らず普遍的な“良い曲”に回帰する傾向が見られる。トップ集団でも、昨年大きく躍進した乃木坂46の楽曲は、所属するソニーレコーズがCBSソニー時代から山口百恵や松田聖子で培ったアイドル保守本流の遺伝子が息づいていたり。この2010年代にレトロスペクティブな“さんみゅ~系”がひとつのジャンルに発展することは、あながちない話でもない。