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普段は“ブー”、機嫌をとるには“ブチコさん”。競馬界ニューアイドルのブチ柄秘話
競馬界に現れた白毛のニューヒロイン、ブチコ(3歳牝・栗東・音無厩舎所属)。サラブレッドには珍しい「白毛」で、かつて同じ白毛で人気を集めたユキチャンの妹だ。
しかし、全身真っ白だったお姉ちゃんと違い、ブチコはその名の通り、『101匹ワンちゃん』もビックリの白い体に茶色のブチ模様なのだ。
何しろこのビジュアル。昨年のデビュー直前には地方紙の夕刊1面トップを飾るなど、その注目度は破格といえるものだった。
そのデビュー戦(2014年10月25日。芝1600m)は5着に敗れ、その後も芝のレースで2着、4着と惜敗。だが、年明けの4戦目でダートに転じると一変し、2着に8馬身差をつける圧勝。さらに続く500万下のレースも3馬身半差の快勝。決してビジュアル先行でないことをアピールし、堂々、春のクラシックに名乗りを上げた。
「初めて見た時はさすがにビックリしましたよ。慣れるまでは何度もギョッとしながら厩舎の仕事をしてました」
そう語るのは、栗東の音無厩舎でブチコを担当する橋本真悟助手。昨年9月にブチコがこの地に来て以来、彼女の世話を担当している。
「普段は『ブー』と呼んでますが、機嫌をとる時は『ブチコさん』と敬語でお願いする感じですね(笑)。この見た目のためか、昔から見られ慣れてるみたいで、全然動じないんです。牝馬としてはとても扱いやすいです」サラブレッドの白毛馬は、これまで日本ではわずか28頭しか生まれておらず、確率的には1万頭に1頭いるかどうかの超希少種(ちなみに28頭中9頭をブチコの母、シラユキヒメが産んでいる。なんという高確率!)。これだけでも珍しい上に、なぜこんなブチ柄の馬が生まれてきたのか。
ブチコの生産者であるノーザンファームの場長で、獣医師でもある中島文彦氏に聞いた。
「それが全然わからないんですよ(笑)。実はひとつ上のお姉ちゃん(マーブルケーキ)も白毛にブチ柄だったんで、ブチコが生まれた時は『あっ、またブチだ!』って声が出ました(笑)。父、母とも同じ血統なんですが、姉のマーブルケーキは少し金髪っぽかったのに対して、ブチコはたてがみに黒と白が混ざっていて、おでこは茶色。同じ血統でも違いが出るんだから不思議ですよね。ちなみに昨年生まれた弟もブチなんですよ(苦笑)」
なんと、母のシラユキヒメは“確変”に入ったのか、ブチコを挟んで3頭連続で白毛のブチ柄を産んでいたというのだ。しかし、そもそもブチ柄なのに、なぜ「白毛」なのだろう?
「乗馬や道産子(北海道和種)には『斑毛(ぶちげ)』というブチ柄の毛色があるのですが、サラブレッドの毛色の種類には、そもそもその『斑毛』がいないとされているので、やむなく『白毛』に分類されているんです。
でも、これだけ出てきてるなら、そろそろ新しい毛色を認めてもいいのかもしれませんね」(中島氏)
それだけ珍しい馬であるブチコ。競走馬としての実力とあわせて、競馬界の記録を塗り替える一頭になってほしい!
(取材/土屋真光 撮影/高橋由二)
■週刊プレイボーイ11号「競馬界のニューアイドル ブチコのひ・み・つ」より