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[藤原薫]映画「迷宮カフェ」で無差別殺人を企てる青年役を演じ「やりがいがある役だな」

 [藤原薫]映画「迷宮カフェ」で無差別殺人を企てる青年役を演じ「やりがいがある役だな」

 

 映画「迷宮カフェ」で無差別殺人を企てる青年スグルを演じた藤原薫さん

  骨髄移植をテーマに、女優の関めぐみさんが主演を務める映画「迷宮カフェ」(帆根川廣監督)が公開中だ。人里離れたカフェを訪れる人々と女性店主によるミステリアスながらユーモアも交えた人間ドラマが展開。関さんが謎めいた女店主を演じるほか、女優の市川由衣さんや元格闘家の角田信朗さん、俳優の藤原薫さんらがカフェの常連客として出演している。常連客で無差別殺人を企てる青年スグルを演じた藤原さんに、役作りや作品のテーマ、撮影の様子について聞いた。

  ◇登場人物の話が一つになることに興味

  藤原さんは今作に出演した経緯を「台本をいただき目を通してから監督の面接があり、役が決まりました」と明かし、「読んだ印象はすごく面白いなと感じた。骨髄移植と人と人との関わり合いというのがテーマなのですが、台本を読む前と読んだ後では感じたものが違いました」と台本の印象を語る。

  どのあたりに面白さを感じたのか。「秘密を抱えた常連客カフェに通うという話だけど、それぞれ抱えている悩みが人間としてありがちというか、よく分かることだった」と切り出し、「松浦(角田さん)だと夫婦の話、アスカ(市川さん)だと彼氏との話、スグルは誰も相手にしてくれないという、世間や友だち、家族との話というふうにそれぞれの話の道すじがある」と説明。「人との関わり合い、命の大切さというのを改めて大切だというのを感じて、カフェにいる人たちの心が一つになる、それぞれの道が一つにつながっていくという方向性が面白いと感じた」という。

  ◇心情の変化や距離感を大事に演技

  藤原さんが演じているのは、頭脳明晰(めいせき)で無差別殺人を企てていたという青年スグル。役のイメージを「誰からも相手にされず孤独で、しかも少年時代にいじめられて、本当に一人で生きていたという感じ。それで無差別殺人を企てるという役柄」と語り、「多分、スグルは病気とかではなくて心がただ弱いだけで、環境が悪かったからそういう気持ちになってしまったのでは」と分析する。そして「スグルは誰かがそばにいれば変われるのかもというのは、台本を読んでいる時から感じました」という。

  演じる際には「心情の変化や距離感に」に注意した。「(スグルは)最初、人との関わり合いが苦手で人との距離を置いていたというのはあったのですが、次第に命の大切さなどを分かってくるので、その距離感が演じる上で難しいところでした」と打ち明ける。「今までの作品もそうですが、自分が体験していないような役の時は、自分で考える部分もありますが、人と相談して『こういうことなんじゃないか』といろんな意見をもらって、その中で自分自身で一つにまとめている」と役作りのスタンスを明かす。

  今作ではスグルの気持ちの変化を表現するため、「人との距離を置いているという役だからといって普段は誰とも接しないで距離を置いておこう、撮影の時もちょっと(距離を)置いておこうというのではなく、役作りの時は実際に行動に移すよりも、まずその役(の人物)が考えているようなことをまとめるというとことから入る。そこが工夫した部分です」と演技プランを語った。

  ◇役作りに帆根川監督が一役

  周囲の意見も取り入れていく中で、「自分自身が体験したことないような役だったが、イメージはしやすい環境だった」と話す藤原さん。「スグルが帆根川監督に似ていると感じる部分があったから」と理由を明かし、「いろいろと話を聞くと、考え方が少しスグルに似ているのではと。自分がスグルとしての考えを持って撮影に行っていたので、監督と接している時に『あれ、何か似ている部分がある』とすぐに気づけました」と冷静に分析する。続けて、「監督もシャイな部分みたいなところがあって、人との関わり合いもあまりフレンドリーではないような感じもあったので、そういう部分もスグルに似ているから参考にしようという部分はありました」と語る。

  撮影では、「関さんとは現場でもふざけあったりするなど、共演者の皆さんとはすぐに打ち解け合って仲良くなりました」と笑顔を見せる。和やかな雰囲気の中の撮影で、印象に残っているエピソードは、「撮影でボディービル大会のシーンがあるのですが、角田さんがそれに向けて体作りをされていた」と切り出し、「現場ではゆで玉子の白身だけを食べていて、すごい人だなと思いました」とエピソードを明かした。さらに、「撮影が5~6月頃だったので結構日差しもあり、角田さんが外の撮影の時はずっとパンツ一丁で体を焼いていたのですが、撮影が遊園地で観覧車に乗るシーンだったので普通のお客さんもいて、その中で焼いていたので注目の的でした」と言って楽しそうに笑う。

  ◇インパクトある役にやりがい

  藤原さんといえば中島哲也監督の映画「告白」(2010年)での犯人役が印象的だが、自身も「『告白』がなければこの場にいなかったのだろうなと。本当に大きな作品に出合えたなと思っています」としみじみ語る。当時、「中島監督にはビシバシ鍛えられました……というか、自分はど素人だったので悪口しか言われませんでした(笑い)」とユーモアたっぷりに振り返り、「それがあって今の自分があるから体験してよかったと思います」と感謝する。

  今作も「告白」のようにインパクトのある役だが、「『告白』や今作のスグルという役は暗い感じでインパクトもあって役作りも大変だけれども、自分自身こういう役はやりがいがあるなと思う」といい、「世間からそういうイメージがついたとしても全然平気。むしろそういうイメージがあったら、そういう役をずっとやっていけるんだなと思う」と目を輝かせる。

  出演前は「骨髄移植は聞いたことがあっても内容が詳しく分からなかった」という藤原さんだが、今作を通じて「骨髄移植とはこういうものなんだ、骨髄バンクに登録すると自分が誰かに提供することによって誰かが助かることが分かった」と話す。そして、「骨髄移植を通して、人と出会うこと、触れ合うことによって考えた方が変わっていく話なので、ぜひこの映画を見て、骨髄移植についての意識を少しでも持っていただけたらなと思います」と力を込める。そして見どころについて、「心境の変化や、スグルが何を考えているのだろうとか、どういう生き方をして今のスグルがいるのだろうということを意識して演じたので、そこを感じ取っていただけたらと思います」とメッセージを送った。映画は全国で公開中。

  <プロフィル>

  1995年9月6日生まれ、東京都出身。小学生時代から子役として芸能活動を始め、2010年公開の映画「告白」で少年B・下村直樹を演じ、注目を集める。数多くのドラマや映画、CMなどに出演している。主な出演作として、映画は「悪の教典」(12年)、「鈴木先生」(13年)、「人狼ゲーム」(13年)、ドラマに「幽かな彼女」(フジテレビ系)、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」など。現在、ドラマ「学校のカイダン」(日本テレビ系)に出演中。初めてはまったポップカルチャーはアニメで、当時は「デジモン」が最も好きだったという。

  (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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