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<選抜高校野球>兄に託された全国制覇の夢 敦賀気比・山本
紫紺の優勝旗が初めて北陸に翻る。1日の第87回センバツ決勝で敦賀気比(福井)が東海大四(北海道)を3−1で破って初優勝し、春夏通じて初めて北陸勢として頂点に立った。勝利の瞬間、敦賀気比のアルプス席は、赤いメガホンが打ち鳴らされ、歓喜に包まれた。北海道勢初のセンバツの頂点に挑み、敗れた東海大四にも大きな拍手が送られ、球児の夢舞台が幕を下ろした。
◇
敦賀気比の山本皓大(こうた)(3年)は、昨夏の甲子園での敗北をきっかけに目指していた投手への未練を断ち、「野手として全国制覇する」と決意して外野手として練習を重ねてきた。実現したその決意は、部OBで甲子園のマウンドに立った憧れの兄・翔大(しょうた)さん(20)からの独り立ちでもあった。
1点を追う一回裏、準決勝まで4試合で10打数無安打と苦しんできた山本選手が、同点の適時打を放つ。「抜けてくれ」。当たりは決してよくなかったが、気持ちのこもったスイングで右前に運んだ。「ナイスバッティング」とベンチも沸き、嫌な流れを一変させた。
ずっと目標は兄だった。2012年春、スタンドから見守った翔大さんの姿が目に焼き付いている。1回戦で敗れたが、エースとして相手打線に立ち向かう姿に憧れた。敦賀気比に進んだのも、兄を追ったからだ。
しかし昨年4月、東哲平監督(34)から外野手への転向を指示された。未練はあったが、「仕方ない」と自分に言い聞かせた。打撃への自信もなかったが、仲間が練習を終えてからも打ち込みを続け、手のまめをつぶした。努力は実を結び、レギュラーをつかむ。
昨夏の甲子園でもバットでチームに貢献したが、準決勝の大阪桐蔭(大阪)戦でエースが打ち込まれ、登板を指示された。思いがけずに立ったマウンド。「目標としていた場所」に感激したが、緊張に襲われて手足の震えがとまらない。汗を含んだ帽子を重く感じ、頭が真っ白になった。夢中で投げても流れは引き戻せず、チームは敗れた。
兄と同じマウンドに立った満足感はなく、頂点に届かなかった悔しさだけが残った。「次は必ず勝ちたい。自分に何ができるのか」。そう考えると投手への未練が消え、兄が歩んだ跡をたどるのではなく、野手として進む道が見えてきた。
大会中、翔大さんからは電話で励まされ続けた。決勝前日の夜にも「とにかく勝ってくれ。楽しんでくれ」と全国制覇の夢を託された。同点の一打も見てくれていたはずだ。「今は憧れではないが、ずっと支えてくれた存在で、一緒に優勝した気持ちです」。自ら選んだ道で、兄とともに目指した頂点にたどり着いた。【竹内望】