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中国人、日本に殺到しオムツ買い占め争奪戦…アジアで人気爆発、花王らの業績押し上げ

中国人、日本に殺到しオムツ買い占め争奪戦…アジアで人気爆発、花王らの業績押し上げ

 

 一昨年ごろから、ドラッグストアなどの紙オムツ売り場に中国人が殺到する騒動が日本各地で起きた。ついに捜査のメスが入り、昨年10月に兵庫県警が中国籍の男3人を出入国管理法違反(資格外活動)の容疑で逮捕した。3人は調理師の在留資格で入国しながら、神戸、明石、姫路各市のドラッグストアで紙オムツを買い占める仕事に従事し、在留資格外の活動をした容疑で逮捕された。

 中国では、日本製紙オムツの人気が高く、日本の倍以上の価格で取引される。価格差に目をつけた中国人ブローカーが日本国内で紙オムツを買い占め、中国に持ち込んで高値で売るようになった。やがて日本全国で中国人の買い占め部隊が出動する騒ぎにエスカレートした。中でも、爆発的な人気を集めている紙オムツが花王の「メリーズ」だ。

 花王が出遅れていた中国市場に本腰を入れ始めたのが2013年である。同年1月、ベビー用紙オムツとしては同社初となる中間所得層向け製品「メリーズ瞬爽透気」を発売した。12年10月に稼動した中国初のオムツ工場で生産している。標準Mサイズで1枚当たり約1.6元(約30円)の価格は、日本から輸出して販売してきた従来製品の半値近い。

 トイレタリーで国内最大手の花王は、売上高1兆2160億円(12年3月期実績。13年に12月決算に変更)のうち7割超を国内で稼いでいた。海外売上高比率を27%から50%以上に引き上げる目標を掲げる。特に300億円程度の年商しかない中国事業をいかに伸ばすかが、大きな課題だった。

 中国の紙オムツ市場は米P&Gがシェア30%超でトップ。ユニ・チャームが20%弱で2位グループにつける。花王は追いつき、追い越すことを狙って中間所得層の開拓に乗り出した。中国では富裕層を対象に日本基準の高価格商品を中心に販売してきたが、戦略の大転換を図り、その第一弾が「メリーズ」だった。

 中国では「一人っ子政策」もあり、子どものためなら出費を惜しまない家庭が増えてきた。花王は沿岸部の中間所得層をターゲットにして売り込んだところ、想定をはるかに超える効果をもたらした。インターネット上で「メリーズがいい」という書き込みが増え、メリーズ人気に火が付き、日本でのメリーズ買い占め騒動に発展したのだ。

●花王、中国事業黒字化

 花王の14年12月期連結決算は好調だった。売上高は過去最高の1兆4017億円(前期比6.6%増)。営業利益は9期ぶりに過去最高益を更新した13年同期を上回り、1332億円(6.9%増)となった。カネボウ化粧品の買収で24期続いた経常増益の記録こそ途絶えたが、国内最長の増配記録は、14年12月期で25期連続となった。15年12月期を最終年度とする中期経営計画の目標である連結売上高1兆4000億円を突破し、営業利益1500億円の達成は射程圏内に入った。

 国内外での各種洗剤や紙オムツといった日用品の伸長が、業績好調の背景にはある。14年6月にインドネシアで新発売した衣料用手洗い洗剤「アタック Jaz1(ジャズワン)」は、中間層でシェアを広げた。懸案だった中国事業は「メリーズ」人気で黒字化したという。

 花王は国内では15年1~3月にヘアケアや歯みがきなど日用品と化粧品の新製品を、前年同期の約2倍の200品目投入する。消費増税前の14年1~3月は定番品の供給を優先して、新製品の発売を抑えてきた。今年は、年代ごとの細かな需要に応える商品を増やし、価格の底上げを狙う。

 アジア進出の先駆者といえるのがユニ・チャームだ。30年以上前からアジアを中心に海外展開を積極化させ、実績を積み上げてきた。14年12月期は決算期変更に伴う9カ月間(4~12月)の変則決算になるが、売上高は5536億円、営業利益は613億円。営業利益は実質21%増え、8期連続で過去最高を更新した。中間所得層の拡大を追い風に、アジア各国で紙オムツなどの好調が続いた。

 14年12月期時点の海外売上高比率は64.4%で、海外売り上げを牽引したのはアジアだ。アジア地区は6.5ポイント上昇し49.3%と、5割に迫る勢いだ。

●高齢化社会が到来するアジア諸国

 経済成長が著しいアジア地域では、急ピッチで高齢化が進展している。中国・国家統計局によると、13年の中国の60歳以上人口は2億243万人(総人口比率14.9%)に達している。これが50年には4億人を突破すると試算されており、台湾やタイなどアジア諸国も同様の課題を抱える。アジア諸国は「大高齢化社会」の到来を迎えようとしている。これをビジネスチャンスと捉えて、日本企業のアジア進出が本格化した。

 14年も押し詰まった12月に、製紙や繊維大手のインドネシアへの投資報道が相次いだ。王子製紙、大王製紙、東レ、ダイワボウポリテックという、そうそうたる顔ぶれだ。投資の目的はすべて、ベビー用紙オムツ生産に向けた合弁会社の設立や、製品増産のための事業拡張だった。

 現在、インドネシアのベビー用紙オムツ市場で、最も輝かしい成果を挙げているのがユニ・チャームである。同社の「マミーポコ」は紙オムツの代名詞といわれるほど浸透。シェア65%という驚異的な数字を達成している。

 アジアでは、日本より速いスピードで高齢化が進むといわれている。だが、今のところ、高齢者向けのサービスや商品にお金を使う傾向は、はっきりとは見られない。今後、アジアの高齢化加速に伴い、大人用紙オムツ需要の大幅な拡大が見込まれるのだろうか。高齢化社会をにらんで進出する日本企業が、これからも増えそうだ。
(文=編集部)

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