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少年犯罪に“稚拙化”の傾向 不良の構造変化「序列なき秩序」に

少年犯罪に“稚拙化”の傾向 不良の構造変化「序列なき秩序」に

 

 川崎市川崎区の多摩川河川敷で中学1年、上村遼太さん(13)=同区=が殺害された事件。川崎署捜査本部に殺人容疑で逮捕された17~18歳の少年3人のこれまでの供述から、人気者だった上村さんに対するリーダー格の少年(18)のねたみや逆恨みが動機として濃厚になっている。人の命を奪うにしては、あまりに幼稚で短絡的な殺意。最近の少年犯罪について専門家は「稚拙化の傾向」を指摘する。

 これまでの調べでは、18歳の少年が主導し工業用カッターで上村さんの首を切り、17歳の少年らも18歳の少年に脅されるなどして加勢した疑いが浮上している。

 18歳の少年は今年1月、上村さんを「生意気だ」と激しく暴行。その後、上村さんの友人らが抗議し、下旬に謝罪した。事件前には、さらに上村さんの知人らが少年宅を訪れ、警察官が駆け付ける騒ぎも起きた。

 18歳の少年は「カミソン(上村さんの愛称)のためにこれだけの人が集まったと思い、頭にきた」などと供述している。

 未成年同士のもめ事が取り返しのつかない事態に発展したケースでは、広島県呉市で2013年6月、16歳の少女が元同級生らに殺害された事件が記憶に新しい。

 「無職の16歳少女との無料通信アプリ『LINE』での口論がトラブルの発端となった。主犯格の無職少女は仲間を集めて被害者の少女をリンチし殺害。遺体を山中に遺棄した」(捜査関係者)

 なぜこうした悲劇が続くのか。少年犯罪に詳しい桐蔭横浜大学の河合幹雄教授(法社会学)は「ちょっとしたことで行為がエスカレートし、重大犯罪に発展するケースが目立つ。犯罪の『稚拙化』が要因の1つとして考えられる」と話す。

 昔ながらの不良は番長であるリーダー格が、格が下の者を引き連れて非行に走るパターンが多かった。序列があることで秩序が保たれる側面があったが、この構造に変化がみられるという。

 河合氏は「最近の非行少年・少女は、上下関係を忌避する傾向にある。しっかりとしたグループを作らずにゆるい関係で繋がっている。LINEなどのコミュニケーションツールの浸透も、少年らの横並び意識を助長した側面があり、歯止め役がいなくなり仲間の暴走を許しがちになった」と解説する。

 広島の事件同様、今回の事件も仲間への制裁、いわゆる「やき」の延長の中で起きた。

 河合氏は「『やき』は不良仲間での一種の儀式で、その様式は上の世代から受け継がれるものだった。万引などの犯罪も、検挙された時のリスクを軽減するための知恵や技能を伝承していたが非行集団の秩序の崩壊で、その伝承がなされなくなり、結果として犯罪の凶悪化を招いたといえる」と話している。

 秩序なき緩さから生まれる「限度知らず」という愚かさ。殺人にまで突き進む少年たちの心理を読み解くカギになりそうだ。

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