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「1回6万円の高級ソープ接待」警視庁捜査2課が久々に贈収賄を摘発
警視庁捜査2課が、JR貨物(本社・東京都渋谷区)が発注した工事を巡り、接待の見返りに工事参入に便宜を図ったとして、4月10日、JR貨物のグループリーダー・富永英之容疑者(45)と電気設備会社カナデン(本社・東京都大田区)課長・三枝裕祐容疑者(47)を逮捕した。
富永容疑者の収賄容疑は、カナデンがJR貨物の改修・新築工事で、照明器具などを納入できた謝礼と知りながら、川崎市のソープランドで7回、三枝容疑者から接待を受けたというもの。約43万円分の接待ということだから、1回6万円の高級ソープだったことになる。
2014年はゼロ件だった贈収賄摘発
警視庁捜査2課は、約350名もの捜査員を抱えて「霞ヶ関」の高級官僚らに監視の目を光らせ、過去に旧厚生省事務次官の贈収賄事件、外務省報償費流用事件など、赫々たる戦果を上げてきた。そうした大型摘発に比べると、JR貨物は「みなし公務員」に過ぎないし、金銭授受が特定されていない“弱み”はある。
だが、現在、検察・警察の刑事司法が置かれている立場を思えば、接待場所を特定、日時を割り出し、贈賄側と収賄側の双方を自白させて供述書を取り、事件を受ける側の東京地検特捜部を納得させたのだからたいしたものである。
実は、警視庁捜査2課は2014年に一件の贈収賄事件も摘発できず、勤務評定がつかない状態だった。3月を過ぎても立件がなく、4月に入れば統一地方選が始まり、選挙は捜査2課が力を入れざるを得ない分野なので、
「摘発ゼロのワースト記録はどこまで伸びるのか」
と、捜査2課OBや記者クラブの社会部記者たちはやきもきしていた。
それだけに“朗報”である。夏以降の人事異動が想定される重松弘教捜査2課長は、「贈収賄を立件できなかった捜査2課長」の“汚名”を受けずに済んだ。
これで捜査2課は、仕切り直しとなって新たな事件摘発に臨むが、高くなる一方の「贈収賄立件のカベ」を、どう乗り越えるかの議論を高めたほうがいい。
「検察改革」の一環で、脅しを交えた自白の強要は封じられ、たとえ容疑者を落とし、自白調書を取ったとしても、それを補強する別の証拠が必要になった。それでは密室で行われる贈収賄事件の摘発は難しく、捜査2課の“沈黙”が続いた理由だった。
「みなし公務員」の「ソープランド接待」は、過去の業績に比べると評価は低いかも知れないが、そうした論議の契機となったという意味で、「生みの苦しみの事件」と考えたほうが良さそうだ。
伊藤博敏ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。近著に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)がある