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コラーゲンと修羅場【彼氏の顔が覚えられません 第21話】
カズヤの新しい恋人は、恐ろしいことにあの子豚ちゃん・マナミだった。
「違うってば! ただの友達だって…べつに、イズミから奪うつもりはないよー!」
子豚ちゃん本人は否定しているが、どうだか。
4月。新しい年度を迎えた直後、いきなりこんなひどい状況からスタートしなきゃいけないのは残念以外のなにものでもない。学食でたまたまカップルを見て。見ただけだったなら、何も問題なかった。どうせ相手の顔なんて判別できない。そのままスルーできた。
女の方から声をかけてきたからいけないのだ。「あ、イズミ…!」しかも大声で。男の方は一瞬私と目を合わせ、それからうつむいた。何となく見たことある服装だったので、まさかと思って、「え、ひょっとして、カズヤ…?」。声をかけても黙ったままの男。沈黙は、肯定を意味していた。
「ち、違うの…これは、そういうわけじゃなくて…」女の方は、こっちが何も言わないうちから必死に言い訳しようとしている。なんなんだ、この修羅場は。
「イズミなんて気安く呼ばないで」
しょぼくれた様子のカズヤを尻目に、子豚ちゃんに対して怒りの台詞を口にする。
「わぁ、もう、こわいー! 機嫌なおしてよー、イズミ…ちゃん? イズミさま?」
子豚ちゃんがそうやって媚びたような台詞を吐くたび、ストレスが募る。この女、いや、豚。どう料理して食ってやろう。頬肉のあたりなんかコラーゲンたっぷりではなかろうか。それともただの脂身か? 鉄板の上に載せたらさぞかし、肉の焼けるいい音がしそうだ。
その前に、どうやって殺そう。刃物で刺す、鈍器で殴る。いろいろ方法はあるが、肉を傷つけないためには首を絞め上げるのが一番か…。
「あ、イズミ、ポニーテールにしたんだー。イメチェン? かわいー!」
不自然な話のそらし方をする豚。おかげで気が散って、せっかく考えていた殺害計画が頭から消し飛んだ。もういいやコイツ、殺すのもメンドい。
「いつから付き合い始めたの。2月のデートが初めて? それとも、1月から?」
一応、聞いてみることにする。だいたい想像つくけど、あの三が日の“相談”がキッカケなんだろう。「ギター弾けるようになりたいんだ。カズヤ軽音部なんでしょー、教えてよー」とか何とか言ってたあれは口実だったのだ。そこからしばらくは友達だったのか、すぐ恋愛に切り替わったのか。
「ち、ちげーよ。いつからも何も、ずっとギター友達だよ」
ようやく顔を上げ、口を開くカズヤ。…