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廃炉が原発新増設を推進するというパラドックス
3月17日に関西電力の美浜1号2号と敦賀1号、18日には中国電力の島根1号と九州電力の玄海1号、あわせて原発5基の廃炉が決まった。5基とも運転開始から40年以上経つ古い原発だ。この廃炉の決定は、福島第一原発事故後に民主党政権が定めた「原発運転期間は原則40年まで」というルールの初適用だといえる。しかし、これで日本もようやく脱原発の道を歩き始めたのかと思えば、どうも風向きが違う。
廃炉決定の報から間もなく、まず毎日新聞が<老朽原発廃炉:再稼働にらみ>という解説記事を書いた。脱原発スタンスの毎日は、今回の動きをネガティブに捉えている。
<既存の原発48基がルール通り運転40年で廃炉になれば、原発は49年にゼロになる。だが、電力各社は廃炉とともに、運転延長も積極的に申請する方針。今回の廃炉は、脱原発依存への一歩というより、再稼働への地ならしという意味合いが強い。>
客観的記述の行間に記者の憤りが感じられる記事だ。同じく反原発派の朝日新聞は、<廃炉の決定―「脱原発」を見すえてこそ>と題した社説で、こんなふうに意見している。
<廃炉の道筋を整えることは一面で、原発を更新しやすい環境をつくることにもなる。しかし、福島第一原発の事故を思えば、脱原発につなげることにこそ、廃炉を進める意味がある。関西電力は同じ17日、40年前後の原発3基の運転延長を求めて、原子力規制委員会に審査を申請している。脱原発依存を着実に進めるのか。政府はエネルギーの将来絵図を明確に示すべきである>
正直、もごもごとした遠回しの表現に苛立つのだが、要は、廃炉が逆に原発依存を強めかねない危険性の指摘だ。
では、原発推進派はこのたびの廃炉をどう評しているか。最右翼と思われる産経新聞は社説の<原発5基の廃炉 40年運転規制は理不尽だ>で、運転延長の可否が原子力規制委員会に委ねられすぎだと批判。勢いのよい筆遣いで、こんなことまで書いている。
<この理不尽な制度の早急な改正が必要だ。放置すれば、日本の原発はゼロに向かい、国力は地に落ちよう。それでよいのか。原発は、運転開始から多年の歳月が経過していても大部分の機器が新品に交換されているので、老朽化という概念はそぐわない>
産経新聞の「主張」という社説は、しばしば感情表現が豊かなので、<国力は地に落ちよう>程度の煽りは愛嬌だが、原発に<老朽化という概念はそぐわない>は乱暴すぎないか。…