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強引なまなざし【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第25話】

 強引なまなざし【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第25話】

 日曜午後はフットサルの練習試合だった。
 
 
 桃香は応援に行った。鮎子を誘ったが「行きたくない」とそっけなく断られた。慎吾も前半は選手として試合に参加することになった。慎吾が走るとき少し脚を引きずることは誰も気にしなかった。
 
 普通に慎吾にボールを渡し、和気あいあいとプレーが進んだ。元々プロ選手になりたかった慎吾の動きは息を飲むほど素早やかった。脚の怪我などハンデではないと桃香でもわかった。こぼれ玉を拾い、相手の油断したすきにボールを奪う機敏さは秀逸だ。
 
 上半身を右へ左へ向きを変えながらも脚はまったく違う方向へボールを飛ばす。キャプテンの冬馬より技術的に優れているのは誰が見ても明らかだ。体育館の外の温度は低いのに、ピッチのすごい熱気がベンチまで伝わって来た。
 
 真剣にボールを追う慎吾を見ながら桃香は胸が熱くなった。慎吾はボールと仲がいい。いっとき怪我でボールと離れたけれど今は元通り仲良く連れ添っている感じだ。休憩タイムに冬馬が桃香を呼び出した。
 
 「桃香、話したいことがあるから、今日一緒に帰ってくれないか。車でうちまで送るからさ」
 
 「え。でも慎ちゃんと帰る約束…」
 
 「今日は俺の言うこと聞いてくれよ。頼むから」
 
 いつになく強引な冬馬のまなざしが桃香を刺した。帰り際、慎吾に言い訳をした。
 
 「慎ちゃん、冬馬がクラス会の打ち合わせあるらしいから、話しながら帰ることになった。慎ちゃん先に帰って」
 
 なんで嘘ついてんだろうと桃香は自分を叱りたくなる。
 
 「うん、じゃあ買い物して帰る。新しい機種のスマホ見たいから」
 
 (続く)
 
 【恋愛小説『自由が丘恋物語 ~winter version~』は、毎週月・水・金曜日配信】
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 (二松まゆみ)

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