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<ネパール地震>住民、手作業で救助 古都バクタプル
【バクタプル(ネパール中部)金子淳】ネパールを襲った巨大地震は、首都カトマンズ近郊の古都バクタプルにも甚大な被害をもたらした。古い街並みは多くが崩落し、がれきの上は異臭が漂う。28日には生き埋めになった被災者の生存率が下がる「発生から72時間」を迎えたが、救助活動は人手や機材が足りず、細々と続けられていた。
カトマンズから東へ約15キロ。15〜18世紀に当時の王朝の首都があったバクタプル中心部の路地を入ると、住宅街の一角ががれきの山になっていた。「祖父と祖母の家だ。2人はまだ中にいる」。間近で救助活動を見ていたサニーシュさん(19)はつぶやいた。
軍の救助隊はわずか十数人。重機はなく、列を作ってバケツリレーのように手作業でがれきを取り除いている。「足が出てきた」。近くの住民が騒ぎ出すと、サニーシュさんは目をはらしたまま立ち尽くした。救助作業にあたる陸軍のラーイさん(22)は「この辺りで多くの人が亡くなった。我々も精神的につらい」と漏らした。
地震発生当時、築約110年というレンガ造り4階建ての自宅にいたスンダリ・マヤさん(78)は、孫に抱えられ屋外に脱出。その数秒後に家屋が崩落し、間一髪で助かった。だが、最上階にいた親戚ら6人のうち1歳の子供を含む4人ががれきにつぶされるなどして死亡、2人が重傷を負った。「まだ余震が続いている。とにかく恐ろしい」。マヤさんは何度も繰り返した。
一方、がれきの下敷きになりながら助かった人もいる。5階建て住宅の1階で洗濯していたアミタ・シザフォさん(23)は、揺れを感じて外に飛び出したが、向かいの家が倒れてきたため、再び屋内に逃げた。すると今度は自宅の天井が落ちてきた。階段裏の隙間に立っていたため直撃を免れたが、周囲はがれきに覆われ身動きができない。「助けて」。そう叫ぶと、4階にいた母(50)と弟(23)の声が頭上からかすかに聞こえた。2人も同じようにがれきの中で動けなくなっていた。「このまま死ぬのだろうか」。恐怖でパニックになった。
約1時間後、兄のアミンさん(26)が外出先から駆けつけ、家族が生き埋めになっていることを確認。周辺住民ら数人とともに2時間がかりで全員を救出した。母と弟は骨折などのけがをしたが、アミタさんはほとんど無傷だった。救出したアミンさんは「声が聞こえたときは希望が見えた。奇跡のようだ」。アミタさんは「がれきの中では何も考えられなかった。生きていられてうれしい」と少し笑った。
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