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チョーク 電子化に泣く
今月20日で廃業するチョーク業界2位の「羽衣(はごろも)文具」(春日井市)は、独自に考案したチョークの自動製造機を取引先の韓国の代理店に譲渡する。韓国では安価な欧州製が売り上げを伸ばしているが、高品質の日本製は高くても売れるためという。(西村公秀)
「滑らか」と好評米から大量注文 羽衣文具は1932年に名古屋市中区に「日本チョーク製造所」として創業し、47年に現社名にした。白い粉が手に付かない「被膜付き」のチョークが人気で、学校向けに売り上げを伸ばした。
現在の渡部(わたなべ)隆康社長(71)は、創業の祖父から数えて3代目。渡部社長によると、最盛期の80年代から90年代には年間製造量が9000万本、市場占有率(シェア)も約40%あったという。だが、教育の電子化で平成に入って学校で黒板を使わない授業が増えると、年間生産量は4000万本までに落ちた。この影響で、2012、13年度の税引き後利益は連続赤字で、14年度も赤字の見込みとなっている。こうした中、渡部社長は自らの病気と後継者がいないことから、自主廃業を決めた。
今回、韓国の代理店に譲渡するのは、原料に炭酸カルシウムを使う「白墨自動製造機」の3ライン。渡部社長が叔父と一緒に考案したものだ。原料をプラスチック製の箱に入れると、あとは機械が自動的に円柱形の形に押し出して成形し、ピアノ線で長さ7・5センチに切断する。「1本1秒の生産速度」が自慢だ。
昨年10月にホームページで廃業を告知した後、米国の数学教授らの団体からインターネットで大量の注文が入った。渡部社長は「今月11日に60カートン(約1トン)を船便で送った。黒板に方程式を書くのに滑らかで書きやすいと愛用してくれていた」と感謝する。
全国7社が加盟する日本白墨工業組合(名古屋市)によると、一昨年には名古屋市内のメーカー1社が自主廃業しており、国内のチョーク業界は厳しい時代を迎えている。