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祖父の体験談、胸に 院生の学芸員奮闘

 祖父の体験談、胸に 院生の学芸員奮闘

 戦後70年の節目に合わせて県と名古屋市が7月中旬に開設する「戦争に関する資料館」の学芸員として、20歳代の大学院生が展示準備に追われている。記憶が過去のものになりつつある今、「当時の体験を受け継ぎ、次代に伝える役割を果たしたい」と語る。

  資料館には、戦地での無事を祈る手紙や名古屋空襲で焼け焦げて変形した茶器など、県民から寄贈された約7500点が保管・展示される。

  「空襲が多くなり、名古屋も第一に狙われることはもちろんでありますから、国土防衛に奮闘致します」。1944年9月、名古屋市の男性が戦地の兄に宛てた軍事郵便には、死と隣り合わせの中で肉親を思う気持ちがつづられている。県内に住む女性に届いた別の手紙には「お互い死すまでがんばりましょう」と記されるなど、戦争に翻弄された人々の姿もにじむ。

  学芸員は名古屋大大学院博士課程で日本近代史を研究する橋本紘希さん(27)(松江市出身)で、昨年10月に採用された。志望動機の一つは昨年92歳で亡くなった祖父との思い出だった。

  祖父は学徒出陣の様子や銃弾を受けた体験を語ってくれた。しかし橋本さんは「もっと話を聞いておけばよかった」と悔やむ。最も身近な戦争体験者だった祖父の死で、社会から当時の記憶が失われつつあることを実感したからだ。

  「あと10年、15年すれば話を聞く機会もなくなる。私たちの世代が戦争の悲惨さと平和の大切さを受け継ぎたい」。具体的な地名や人名が出てくる資料を通し、人々が戦争にどう向き合っていたかを考える展示を目指している。

  資料館について県県民総務課の菊池学さん(48)は「一番来館してほしいのは子どもたち。祖父母と孫が展示を見ながら語り合う場にしたい」と語った。資料館は名古屋市中区丸の内の県庁大津橋分室を活用。常時200~300点を展示し、3か月ごとに入れ替える。

  自治体が出資、運営する戦争関連の資料館は広島平和記念資料館(広島市)や大阪国際平和センター(大阪府・市)などがある。

  資料寄贈などの問い合わせは県県民総務課(052・954・6160)、市総合調整室(052・972・2224)へ。

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