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日帰りで楽しむロンドン郊外の街 (5) なだらかな丘陵地帯に広がる美しい古き良き村々
ロンドンから西へ約200km。東京都と同じくらいの面積を持つコッツウォルズは、バース、オックスフォード、ストラットフォード・アポン・エイヴォン、チェルトナムに囲まれている、美しい丘陵地帯。このなだらかな丘陵地帯に広がる美しい田園風景と、この地方独特のはちみつ色のライム・ストーンや茅葺屋根からなる味わいのある家々を目当てに、観光客は1年中絶えることがありません。
美しい季節の花々が咲き乱れるイングリッシュ・ガーデン
ロンドンからコッツウォルズへは高速道路M40をオックスフォード方面へと向かうか、列車でオックスフォードまで出て、オックスフォードから車で向かうのが便利でしょう。残念ながらどこの村も公共の交通機関があまり発達していないため、日帰りの旅にはだんぜん車がオススメです。ロンドンから車で向かう途中にも、目の前に広がってくる緑の牧草地、辺り一面の菜の花畑など、終始田園風景の景色を楽しむことができるでしょう。
「ウール・タウン」として栄えた名残を残す、マーケット・ホール(チッピング・カムデン)
実は、私は2003年2月から8月までコッツウォルズの北にある端の町、バンブリー(Banbury)に住んでいたことがあります。この町で暮らしていた頃は、あまり起伏のないコッツウォルズの風景に物足りなささえ感じていたものですが、コッツウォルズを離れ、いざロンドンへ移ってみると、当たり前だと思っていた小鳥のさえずりや幻想的な朝靄、夕暮れに映える美しい立ち木、など全てにおいて無性に恋しくなったものです。そしてこの5月、私のイギリス暮らしの出発点となったこのコッツウォルズに、友人を訪ねて久々に「里帰り」してきました。
コッツウォルズにはB&Bを営む友人、リンとマリアンがいます。彼女たちはロンドンの同じ学校で校長先生と副校長先生だったという仲。リタリア後コッツウォルズに移り住み、2人でB&Bを経営しているというなんとも素敵な”第2の人生”を送っています。このように、コッツウォルズは観光客だけでなく、イギリス人にとってもいつか住んでみたい憧れの場所。その理由は訪れてみれば、すぐ納得できることでしょう。
地元で採れるライム・ストーン(石灰岩)を使用して造られた建築物に囲まれたコッツウォルズの村々、はまるで絵本の中の世界のよう。「コッツウォルズのヴェニス」と呼ばれる、ボートン・オン・ザ・ウォーター(Bourton-on-the-Water)、ウィリアム・モリスが「イングランドで最も美しい」と賞賛した、バイブリー(Bibury)などはコッツウォルズを代表する村としてよく知られています。
バイブリーのアーリントン・ロー
ナショナル・トラストに管理されているアーリントン・ローの家並みと湿地帯
バイブリーの歴史があり、愛着がもてる家々
ウィッシュランド川にかかる趣のある石橋(ボートン・オン・ザ・ウォーター)
しかし、コッツウォルズ巡りの本当の魅力とその楽しみというのは、また別のところにあります。コッツウォルズの名前が「羊のいる丘」という意味を持つ通り、コッツウォルズの村々は、13~14世紀にかけて羊毛産業で発展してきました。その商業の中心地になっていた村々を中心に年々観光地化や自然美保護運動が進み、観光客が訪れるようになりましたが、まだまだその様相をひそめている、素敵な村もたくさんあります。それが、私がコッツウォルズへ車での旅を勧める理由の1つです。ドライブ中、気に入った村があったら、ぜひ車を止め小休止をしましょう。歴史あるパブでのランチ、はちみつ色の美しい家々や花の咲き乱れる美しい庭を見ながらのウォーキングなど、車ならではの気軽さでの旅を楽しみたいものです。
ストウ・オン・ザ・ウォルドのはちみつ色の町並み
コッツウォルズに住んでいた頃、友人2人とは車でよくコッツウォツズ巡りをしたものですが、今回も約3時間程度のドライブに連れて行ってくれました。私たちがこの日向かったのは、B&Bのゲストにも必ず勧めるというほどリンが大好きなストウ・オン・ザ・ウォルド(Stow-on-the-Wold)。アンティークの町として知られるこの町で、アンティークの食器やファブリックのお店巡りをしたあと、可愛らしいティールームでクリームティー(Cream Tea、熱々の紅茶とスコーンのセット)をオーダー。カントリー風な香り漂う手作りのスコーンはまた格別な味。私たちのイメージするイギリスのアフタヌーンティーというのは、これに一番近いかもしれません。
アンティークの町、ストウ・オン・ザ・ウォルドの中心地
スコーンにはたっぷりとクロテッド・クリームを付けて召し上がれ
さて、次に向かったのは、私のリクエストでアッパー・スローター(Upper Slaughter)と ロウワー・スローター(Lower Slaughter)。この2つ村はアイ川で結ばれているのですが、この小川に沿って簡単なウォーキングを楽しむことができます。どちらの村も小さくお互いに近いのでまるで2つで1つの村のよう。ウォーキングをしながら味わいのある小さな石橋、水車、小川のせせらぎ、古いコテージ、美しく手入れされた庭、などの景色が楽しむことができます。ストウ・オン・ザ・ウォルドのように開けた町よりも、私は個人的にあまり商業化されていない静かな村が好きです。典型的なコッツウォルズのひっそりとした村の雰囲気を感じるのには、最高の場所! です。
アイ川沿いに連なるはちみつ色の家々(ロウアー・スローター)
アッパ・スローターとロウワー・スローターを結ぶ、アイ川
水没した道路はフォードと呼ばれる(アッパー・スローター)
アイ川から眺めるアッパー・スローターの長閑な田園風景
アイ川沿いに見られる水車小屋(ロウワー・スローター)
そして、ボートン・オン・ザ・ウォーター、チッピング・ノートン(Chipping Norton)を横目に通り過ぎ、最後に向かったのはロクストン(Wroxton)。バンブリーから車でわずか5分のところにある人口約300人のこの小さな村は、街から最も近い場所で典型的なコッツウォルズの風景が見られる村、と言えるかもしれません。日本のガイドブックには載っていないほど小さく、いつもコッツウォツズ・ドライブの通過点としていたこの村に今回初めて立ち寄ってきました。藁葺き屋根が印象的なこの村には、まるで時が止まったような空間が目の前に広がっています。特に名所はないので、水鳥の泳ぐ小さな池を眺めながら、のんびりと中世のスタイルを保ったままの歴史ある景観を楽しみたいものです。
中世のスタイルをそのまま保った茅葺屋根の家(ロクストン)
ロクストンのライムストーンは、明るいはちみつ色(ロクストン)
まるで絵本の中のような景色にため息(ロクストン)
このように、一言にコッツウォルズといっても、それぞれの町や村の特徴は多種多様。また切り出された場所が違うため、町や村によってライム・ストーンのはちみつ色も微妙に違い、全体の印象も変わってきます。皆さんもぜひ、コッツウォルズ巡りのドライブでお気に入りの村を見つけてみてはいかがですか。
次は、イングランド屈指のビーチリゾート、ブライトンへと向かいます。
石を積み上げた壁もこの地方特有の雰囲気をかもし出している