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金沢城のみならず! 北陸新幹線に乗って城めぐりの旅に出よう
3月14日に開業した北陸新幹線。長野新幹線として運行していた東京~長野駅から伸びる形となり、停車駅は飯山駅、上越妙高駅、糸魚川駅、黒部宇奈月温泉駅、富山駅、新高岡駅、金沢駅の7駅。東京~富山駅を最短2時間8分、東京~金沢駅を2時間28分で結び、従来に比べて約1時間半も短縮されることとなった。首都圏からの観光客の増加も見込まれ、各旅行会社が北陸周遊ツアーを組むなど、2015年は北陸ブームが起きそうだ。
和の伝統美と日本の最新技術を組み合わせた北陸新幹線。その車体やサービスにも注目が集まっている
そんな北陸は、これまで歴史的に注目される機会に乏しかった。例えば、北陸にある城と聞いても、すぐに思い浮かぶのは「金沢城」くらいではないだろうか。たしかに、加賀百万石を誇った前田家の金沢城は、城下町を含めその風光明媚(めいび)な町並みをとどめ、現在も観光地としてにぎわっている。
しかし、だからといって金沢城を一目散に目指すのは待ってほしい。北陸新幹線の沿線には、通り過ぎるには惜しい名城がいくつもあるのだ。そこで今回、北陸新幹線の駅から行ける城を紹介しよう。これまで見えてこなかった北陸の歴史と出合えるはずだ。
川中島の戦いで信玄を手こずらせた「飯山城」
長野駅から各駅停車タイプの「はくたか」に乗って、最初に停車する駅が飯山駅。この駅にはこれまでローカル線の飯山線のみが走っていたが、この度の北陸新幹線開通によりぐっとアクセスが良くなった。ある意味、一番新幹線開業の恩恵を受けるといってもいいだろう。
この飯山駅から徒歩20分、飯山線の北飯山駅から徒歩5分での距離にある城が、武田信玄に対抗して上杉謙信が築いた「飯山城」だ。飯山城は謙信の居城である「春日山城」にも近く、防衛拠点として使われていた。南を断崖、東を千曲川に守られた城で、12年間に及ぶ川中島の戦いにおいても攻め落とされることはなかったという。
現在は公園として整備されており、4月下旬から5月上旬にかけて飯山城址さくらまつりが開催される。同時期には水仙も咲き、桜との共演が訪れる人を楽しませる。信玄が攻め落とすことのできなかった堅城をこの機会にぜひ尋ねてみたい。
春には飯山城の復元された櫓門と桜の調和が楽しめる
三の丸は公園になっており、水仙と桜の共演が見どころ
風光明媚な夜桜を堪能できる「高田城」
飯山駅の次に停車するのが、新潟県の上越妙高駅だ。この駅は新幹線開業にあわせ新たに設立された駅で、”さくらと雪の平原”をテーマにした駅舎にも注目したい。日の光がいっぱいに差し込む窓ガラスに桜の花びらがプリントされていることからも分かるように、上越は桜の名所としても有名だ。
その上越妙高駅の近くには”日本三大夜桜”のひとつとしても知られる「高田城」がある。上越妙高駅で越後ときめき鉄道に乗り換え、高田駅から徒歩約15分だ。徳川家康の6男・忠輝が築城した高田城は、伊達政宗を筆頭に上杉景勝、前田利常ら13人の大名が普請を担当した。春にはライトアップされた三重櫓と約4,000本の桜が日本屈指の規模を誇る広大な水堀に映り、幻想的な光景が現れる。
高田城百万人観桜会(4月3日~19日)にあわせ、4月12日、19日には上越妙高駅発長野駅行きの上り列車の増便が決定している。また、上越妙高駅から直通シャトルバスも運行予定。2014年度の観桜会の参加者は131万人で過去最多を記録したが、北陸新幹線の開業を受け、今年もその記録を塗り替えることになりそうだ。
高田城の桜は1870年(明治3)に火事で城が全焼した後、陸軍が約2,200本を植樹したことがはじまり
路面電車とのコラボに注目の「富山城」
北陸新幹線には停車駅によって4つのタイプが用意されているが、「かがやき」はその中で最も早いタイプ。かがやきに乗ると長野駅から富山駅まで止まることなく、たったの45分で行くことができる。
富山駅で降りたら、駅前から10分程歩いてみよう。整備された石垣と水堀にコンパクトな天守が乗ったこの城が、越中前田家の居城として230年間藩政の中心を担った「富山城」だ。富山城は戦国時代には佐々成政の居城で、豊臣秀吉によって廃城となるも、前田利次により修復された。
現在郷土博物館になっている模擬天守は、第2次世界大戦後に復興を記念して作られたもの。周辺には繁華街もあり、夜のライトアップを含め市のシンボルとなっている。また、富山城は目の前を路面電車が通る。ドイツの車両製造技術を導入した近代的な車両「CENTRAM(セントラム)」と天守の組み合わせは、城ファンのみならず鉄道ファンも思わずうなる、絶好の撮影スポットだ。
富山城のライトアップ。天守の青色の部分は時間によってオレンジなど色が変わる
富山城とセントラムの共演は富山の昔と現在の両方を感じられる
城面積の3分の1! 広大な水堀が自慢の「高岡城」
終点となる金沢駅のひとつ手前が新高岡駅。高岡は国宝・瑞龍寺をはじめ、高岡銅器の製造でも知られる歴史深い街だ。そして新高岡駅から城端線に乗り換え、高岡駅より15分ほど歩くと、富山県で唯一日本100名城にその名を連ねた「高岡城」がある。
高岡城は2代加賀藩藩主・前田利長が、富山城下の火事に際して築いた城。市の中心部に位置しながら多くの緑が茂り、城面積の3分の1を水堀が占める豊かなその水量から魚や鳥も多く生息している。現在は公園になっており、さくらの名所100選に選ばれるなど、花見スポットとしても有名だ。
水堀は北南東の三方を二重に囲むという変わった形状で、利長が築城した姿を現在もとどめている。春から秋にかけてはこの水堀を25分かけてめぐる遊覧船「利長号」と「利常号」も運行。築城当時の石垣を間近で楽しむことができるのでオススメだ。
赤い駐春橋と、広大な水堀を覆うように咲き誇る桜が見どころ
加賀百万石! 威風堂々の「金沢城」
北陸新幹線の終点、金沢駅。この金沢駅からバスに乗り、兼六園下で下車、5分ほど歩いたところに「金沢城」がある。”加賀百万石”と呼ばれ、江戸時代には大名諸藩の中でも最大の102万を有した前田氏の居城だ。城下町も大いににぎわい、現在の金沢の礎となった。
広大な金沢城には必見の遺構がいくつも残るが、特筆すべきは長さ50mにおよぶ三十間長屋だ。二重二階建ての長屋は姫路城と金沢城にしか残っていない極めて貴重なもの。また、金沢城の顔ともいえる重要文化財の石川門もおすすめだ。
そして石川門から通じる国の特別名勝・兼六園にもぜひ足を運びたい。”日本三大庭園”のひとつにも選ばれている庭園は、四季を通じて様々な表情を見せる。金沢城と兼六園では、北陸新幹線の開業を記念して3月14日から22日まで特別ライトアップを実施する予定だ。
重要文化財に指定されている石川門は、桜の名所としても知られている
幽玄にライトアップされた兼六園
北陸新幹線の車体デザインには、日本の伝統文化のエッセンスをちりばめたという。この春は北陸で、ぜひ”和”を感じる旅に出てみてはいかがだろうか。
(文・かみゆ歴史編集部 小沼理)
筆者プロフィール: かみゆ歴史編集部歴史関連の書籍や雑誌、デジタル媒体の編集制作を行う。ジャンルは日本史全般、世界史、美術・アート、日本文化、宗教・神話、観光ガイドなど。おもな編集制作物に『日本の山城100名城』(洋泉社)、『これが皇居です』(宝島社)、『一度は行きたい日本の美城』(学研パブリッシング)、『日本史1000城』(世界文化社)、『廃城をゆく』シリーズ、『国分寺を歩く』(ともにイカロス出版)、『日本の銅像完全名鑑』(廣済堂出版)、『新版 大江戸今昔マップ』(KADOKAWA)など多数。また、トークショーや城ツアーを行うお城プロジェクト「城フェス」を共催。
「かみゆ」
「城フェス」