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「麻原、震えていた」=「隠し部屋」発見の警部補―オウム事件風化懸念

 「麻原、震えていた」=「隠し部屋」発見の警部補―オウム事件風化懸念

 

  オウム真理教による一連の事件解明の突破口になった1995年5月の元代表松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(60)の逮捕。強制捜査で松本死刑囚が潜んでいた巨大な教団施設内の隠し部屋を発見した警視庁の牛島寛昭警部補(57)がインタビューに応じ、「麻原はおびえたようにがくがくと震えていた」と当時の様子を語った。地下鉄サリン事件は、20日で発生から20年になる。

  95年3月の同事件発生の翌日、所轄署で盗犯係の刑事だった牛島さんは、築地署の捜査本部に呼ばれ、同事件の捜査に従事した。

  約2カ月後の5月16日早朝、山梨県旧上九一色村の教団施設「第6サティアン」に捜査員が突入した。牛島さんもサティアンから信者を排除する任務を与えられ一員に加わった。

  早朝から「麻原」を捜す検挙班が機材を使って捜したが、約3時間が経過しても見つからない。

  牛島さんは捜索の約2週間前、施設3階付近の外壁にある空気口に信者がカバーを付ける作業を目撃し、「あの階には何かある」とずっと気になっていた。

  「いそうなところは、ぶっ壊してもいいから捜せ」。主力の検挙班が別の場所を捜索することになったが、牛島さんはそのまま残って施設2階を調べると、机の下にたくさんのマンガ本がある松本死刑囚の三女の部屋にたどり着いた。

  「この近くにいるはずだ」と直感し、天井を破った。頭を出して天井裏をぐるりと見回すと10メートルほど離れたところに、板で仕切られた場所があった。「隠し部屋だ!」。

  捜査員が脚立に上り、部屋の壁をかなづちで壊した。「麻原発見!」。紫の法衣にヘッドギア姿で床に下りてきた松本死刑囚は、おびえたようにがくがくと震えていた。「テレビでみせる威厳はなく、大したことないなと思った」と振り返る。

  肩を貸した捜査員に「重くてどうもすみません」と礼を言い、脈を取ろうとした医師に「カルマ(業)がつくからいいです」と断った場面が印象に残っている。

  詰め掛けた捜査員に一気に輪の外に追いやられた牛島さん。現場指揮官に呼ばれ、発見の経緯を説明すると、「お前が手錠をかけろ」と命じられた。手錠をバスに置いてきたため、借りた手錠で逮捕した。松本死刑囚は抵抗もしなかった。

  「オウム事件を知らない若い警察官もいる」。牛島さんは事件の風化を懸念する。地下鉄事件発生当時、サリンを吸った妊娠中の女性を聴取した。「子どもは堕ろした方がいいんですか」。返す言葉がなかった。今も通勤電車から、女性が住んでいたマンションが見える。「無事、産んだのだろうか」。不安げな女性の表情が脳裏から消えない。

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